日本大百科全書(ニッポニカ) 「バッグパイプ」の意味・わかりやすい解説
バッグパイプ
ばっぐぱいぷ
bagpipe 英語
Sackpfeife ドイツ語
Dudelsack ドイツ語
cornemuse フランス語
気鳴楽器の一種。その起源についてはまだ解明されていないが、長い歴史をもった楽器で、インドから北アフリカ、およびヨーロッパのかなりの地域で用いられ、今日でもスコットランドの軍楽隊の楽器として広く知られている。またその構造も、単純なものから高度に発達したものまでさまざまである。基本的な形は、管にリードをつけた笛を空気袋に取り付けたもので、袋を腕で締め付けてリードを振動させる。袋に空気を送り込む方法としては、逆流防止弁を取り付けた管を通して口で吹き込むもの(口吹き式)と、袋にふいごを取り付け腕でこれを動かすもの(ふいご式)とがある。山羊(やぎ)や羊といった小形の動物の皮や、牛など大形動物の胃袋・膀胱(ぼうこう)などを空気袋としていることが多い。近年はゴム引きの布やゴム袋を用いたものもあるが、その場合、袋内の水分が袋の素材にまったく吸収されないため、吹き込み管式では水抜きのバルブが設けられている。
一般的に、笛は旋律を奏するための指孔をあけたもの1本と、孔のないもの3本前後が取り付けられている。英語で前者はチャンターchanter、後者はドローンdroneとよばれる。チャンターの指孔の数は6~8個の場合が多い。ドローンが3本の場合には、各管はそれぞれ、チャンターの主音の一オクターブ下、四度下、同音に調律されている場合が多い。チャンターの外形は円錐(えんすい)のものと円筒のものがあるが、円錐のものは多くの場合口吹き式に用いられ、大きな音量が得られることから野外で演奏されることが多く、西ヨーロッパによくみられる。円筒のものは逆にふいご式のものに用いられることが多く、柔らかな音色のため室内での演奏に適し、北アフリカ、東ヨーロッパに多い。
発音源であるリードは、口吹き式の場合硬くなければ水分に耐えられず、逆にふいご式の場合には薄いリードでなければ十分に鳴らない。西ヨーロッパではどちらかというとチャンターにはオーボエのようなダブル・リードを用い、ドローンにはクラリネットのようなシングル・リードを用いている例が多い(フランスやイタリアではすべてダブル・リードを用いているものもある)。これに対して、東ヨーロッパではチャンターにシングル・リードを用いている例が多い。リードの材料としては、葦(あし)、金属、プラスチックなどが用いられる。とくに最近のものでは、チャンターにプラスチック、ドローンに金属を用いているものが多い。
[卜田隆嗣]