改訂新版 世界大百科事典 「ラピタイ」の意味・わかりやすい解説
ラピタイ
Lapithai
ギリシア伝説で,テッサリアの山岳地方に住んでいた部族。単数形はラピテスLapithēs。彼らの王イクシオンIxiōnの子ペイリトオスPeirithoosがヒッポダメイアHippodameiaと結婚したおり,彼はその祝宴に,みずからの異母兄弟にあたるペリオン山の半人半馬のケンタウロス族を招いた。ところが酩酊したケンタウロスどもが花嫁やラピタイ族の女を略奪しようとしたので,ここに大乱闘が生じたが,ラピタイ族は,やはりこの宴席に招かれていたペイリトオスの親友であったアテナイ王子テセウスの加勢もあって,激戦の末に,ケンタウロス族を撃退したという。すでにホメロスの叙事詩にも語られているこの戦いは,古くから美術作品の好主題ともされた。有名なものに,アテナイのパルテノン神殿の南メトープの浮彫,オリュンピアのゼウス神殿の西破風の彫刻,新しくはミケランジェロの浮彫などがある。また文学作品では,ラテン詩人オウィディウスの《転身物語》に詳しい叙述がある。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報