改訂新版 世界大百科事典 「ラピタ式土器」の意味・わかりやすい解説
ラピタ式土器 (ラピタしきどき)
南西太平洋,メラネシアのビズマーク諸島ニューブリテン島以東,西ポリネシアまでにわたって,紀元前1600年から紀元ころにかけて分布したオセアニア最古の土器。ニューブリテン島北東岸のワトム島から最初に発見されたが,ニューカレドニア島ラピタLapita遺跡からの出土により型式名となった。焼成温度の低いこわれやすい土器で,粘土の添加物として砂や貝殻粉が使われた。有文のものは30%以下で,文様は繊細な櫛歯や貝殻縁の圧文,隆起線文,沈線による幾何学文などが壺の上半部に施されている。アウストロネシア語を話す海洋民族のもたらした土器といわれ,海岸近くにその遺跡が発見される。北部ニューブリテン原産の黒曜石が土器とともにニューカレドニアまでにわたる地域で発見されることから,広大な海域を航海し,交易を行っていたことがわかる。類似の土器がフィリピンや台湾から発見され,ラピタ式土器の起源がこのあたりか東インドネシアあたりにあるのではないかといわれている。
執筆者:篠遠 喜彦
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