デジタル大辞泉 「粘土」の意味・読み・例文・類語
ねん‐ど【粘土】
[類語]土・土壌・土地・大地・
翻訳|clay
一般語としては、きわめて微細な風化物の粒からなる可塑性と粘性に富んだ物質のことで、砂粒との違いが容易に認識されやすい。岩石の風化物として地質学的に定義すれば、粒径256分の1(2-8)ミリメートル以下の土状沈殿物(海底または湖底の)をいい、地層の間では粘土層あるいは礫(れき)や砂と混在した状態をなしている。土壌学的な定義はやや異なり、国際法的に決められた定義は粒径2マイクロメートル以下の粒子をさす。ただしロシアなどのように2マイクロメートル以下をさらに細区分することも行われる。かつて日本の農学会法では0.01ミリメートル以下を粘土としていたが、この粒径の上限は大きすぎて粘土の特性を示さない粗粒子が入ってしまうために、いまでは採用されなくなった。
粘土の属性として共通の特性は、その化学組成が岩石の風化過程で生成したケイ酸アルミニウムの結晶構造を主体としていることである。この構造は100ナノメートル~1マイクロメートルの単位で測られるようなコロイド粒子であって、電子顕微鏡で明らかにされた。化学組成の違いによって何種類もの粘土が分類されるが、代表的なものはカオリナイトである。その結晶構造はケイ素四面体(ケイ素原子を中心に置き、四つの酸素原子をその周りに配した立体)が前後左右に連結した結晶板と、アルミニウム八面体(アルミニウム原子の周りに6個の酸素原子を配したもの)が1対1の基本構造をもって連結した結晶板が、上下に何枚も重なり合って1粒の粘土粒子をつくっていると解釈されている。またケイ素四面体とアルミニウム八面体が2対1で重なり合うタイプにはバーミキュライトなどがある。これら粘土の表面や結晶板構造の内面にマイナス荷電が生じ、これにプラスのイオン(カリウムやカルシウム、ときには水素)が吸着されて安定する。また水の分子も吸着されるので、粘土は吸湿性をもつ。さらに粘土粒子どうし、あるいは粗粒の砂やシルト粒子を結合させる力があり、土壌粒子全体に集合体(団粒など)を形成させる効果を現す。
粘土にはほかにモンモリロナイト、イライト、ハロイサイト、ベントナイトなどの種類があり、吸湿性の強さには違いがみられる。アロフェンとよばれる粘土鉱物は火山灰の風化過程で生ずるもので、粘土としては例外的に結晶構造をもたない、いわゆる非晶質粘土である。これは有機質コロイド粒子である腐植と結合しやすいという特性をもっている。粘土を土壌の生成過程でみると、風化作用に伴って生ずる二次的生成物であるから、その鉱物成分を二次鉱物といい、あるいは粘土鉱物ともよんで、土壌の生成論、分類論の展開のうえに重要な役割を与えている。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]
岩石中の鉱物が分解,破壊されてできた微細粒子の集合体をいう。土壌の分類では粒子の径が2μm(0.002mm)以下のものを,堆積物・堆積岩の分類では1/256mm以下のものをいうなど,その大きさの範囲は分野により異なる。おもに粘土鉱物より成り,一般に親水性が強く,水を含むと可塑性,粘着性を示し,乾燥すれば剛性を示す。岩石の風化作用,温泉作用あるいは熱水変成作用などによって生じ,地上,海底に広く分布している。特定の性質をもつ粘土,例えば,耐熱性の高いものは耐火粘土として耐火物原料に,さらにその中で鉄分の少ないものは陶磁器原料などとして用いられている(木節(きぶし)粘土,蛙目(がえろめ)粘土など)。窯業原料のほかにも,製紙工業,ゴム工業など多方面に利用され(カオリンなど),粘土は生物の生存に重要な土壌の主成分を構成する。
執筆者:湊 秀雄
粘土は腐植とともに土壌中の主要なコロイドであって,農業の基盤としての土壌が種々の機能を有するのも粘土のもつ特性によるところが大きい。粘土の性質は粘土鉱物に基づくもので,粘土鉱物がもつ特性のなかには,陽イオン交換,イオンの固定,膨潤・分散・凝集など,農業上からみてきわめて重要な性質が含まれている。陽イオン交換は,粘土表面の陽イオンと,これに接触している溶液中の陽イオンとの間で行われる可逆的な交換反応であり,交換しうる陽イオンの最大量(陽イオン交換容量)は,モンモリロナイトのような膨潤型粘土鉱物で大きい。そのため,粘土に不足し,肥料成分の流亡が大きい砂質土壌や漏水過多の水田土壌では,土壌の養分保持能力を高め漏水を防止するために,モンモリロナイトが主成分であるベントナイトが客土として用いられる。粘土鉱物によるイオンの固定とは,イオンが粘土鉱物によって強く吸収され,容易に他のイオンによって交換されにくい現象をいう。固定されるイオンとしては,陽イオンはカリウム,アンモニウム,陰イオンはリン酸が最もよく知られている。リン酸イオンの固定は,粘土表面に吸着されたリン酸が,最終的にはリン酸アルミニウム,あるいはリン酸鉄の化合物となって沈殿することによるもので,バン(礬)土質土壌でとくに顕著である。粘土鉱物は環境条件によってその種類に強い影響をうけ,その分布は土壌型と深い関係がある。なお,学校教材の粘土については〈粘土細工〉の項目を参照。
→粘土鉱物
執筆者:松本 聰
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
掘り出したまま,あるいは精製した状態において,含有アルミノケイ酸塩を主成分とする天然に算出する鉱物集合体をいう.用途,成因,主鉱物相,堆積状態,年代などによっていろいろな分類がなされている.主鉱物は,カオリナイト,ハロイサイト,パイロフィライト,セリサイト,モンモリロナイト,クロライト,イライトなどである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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