1947年アメリカの物理学者ラムWillis Eugene Lamb(1913- )とレザフォードRobert Curtis Retherford(1912-81)が,原子線の磁気共鳴を利用して,水素のエネルギー準位のずれを確認した実験。ディラックの電子論による計算からは,水素原子の2s1/2準位と2p1/2準位とは一致するはずであるが,実際には少しずれているらしいことが,前々から指摘されていた。ラムとレザフォードは,第2次世界大戦中レーダー開発のため著しい発展をとげたマイクロ波技術を用いて,この両エネルギー準位のずれの精密測定を行い,1052MHzのずれを見いだしたのである(このずれをラム・シフトという)。H.A.ベーテはただちに,このずれは電子と放射場との相互作用によるものであろうと指摘した。つづいて,朝永=シュウィンガーの量子電磁力学による計算結果はみごとに実験と一致し,その有効性を示した。こうしてラム=レザフォードの実験は,第2次大戦後の量子電磁力学発展の重要な契機となった。
執筆者:広重 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「ラムシフト」のページをご覧ください。
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