ラム

デジタル大辞泉 「ラム」の意味・読み・例文・類語

ラム(rum)

糖蜜発酵させて造る蒸留酒。特有の香味があり、アルコール分は約45パーセント。カクテルや香味料にも用いる。ラム酒。
[類語]酒類さけるい酒類しゅるい般若湯アルコール御酒お神酒銘酒美酒原酒地酒忘憂の物醸造酒蒸留酒混成酒合成酒日本酒清酒濁酒どぶろく濁り酒生酒新酒古酒樽酒純米酒灘の生一本本醸造酒吟醸酒大吟醸冷や卸し屠蘇とそ甘露酒卵酒白酒甘酒焼酎泡盛ビール葡萄酒ワインウイスキーブランデーウオツカテキーラジン焼酎リキュール果実酒梅酒薬酒やくしゅみりん白酒しろざけ紹興酒ラオチューマオタイチューカクテルサワージントニックジンフィーズカイピリーニャマティーニ

らむ[助動]

[助動][○|○|らむ(らん)|らむ(らん)|らめ|○]《動詞「あり」の未然形「あら」に推量の助動詞「む」の付いた「あらむ」の音変化とも》活用語の終止形、ラ変型活用語の連体形に付く。
直接見ていない現在起こっている事象の推量を表す。…ているだろう。
「いづくにか舟泊ふなはてすらむ安礼あれの崎漕ぎたみ行きし棚なし小舟」〈・五八〉
現在起こっている事象から、その原因・理由や背景などを推量する意を表す。
㋐原因・理由が示されている場合。…だから…なのだろう。…というわけで…なのだろう。
「思ひつつればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを」〈古今・恋二〉
㋑(多く「など」「いかに」という疑問語を伴って)原因・理由が示されていない場合。どうして…なのだろうか。なぜ…なのだろうか。
「やどりせし花橘たちばなも枯れなくになどほととぎす声絶えぬらむ」〈古今・夏〉
(多くは連体形で)他からの伝聞の意を表す。…という。…(だ)そうだ。
「もろこしにことごとしき名つきたる鳥の、りてこれにのみゐるらむ、いみじう心ことなり」〈・三七〉
(多くは連体形で)婉曲えんきょくに表現する意を表す。…(の)ような。…という。→ろう[助動]
「あが仏何ごと思ひ給ふぞ。おぼすらむこと何ごとぞ」〈竹取
[補説]奈良時代に盛んに用いられ、中世からしだいに衰えはじめる。奈良時代には、上一段の「見る」に付いた「見らむ」もある。1の意味で用いられる例は和歌に多く、34の用法は1の派生で、超時間的に用いられることが多い。

ラム(ram)

雄の羊。牡羊。
敵艦に体当たりして破壊する衝角装備艦。また、その衝角。
白羊宮はくようきゅう」に同じ。
[類語]綿羊山羊羚羊かもしか羚羊れいよう

ら◦む[連語]

[連語]《完了の助動詞「り」の未然形+推量の助動詞「む」の終止形》
…ているだろう。…てあるだろう。
「女どちはしどけなく朝寝あさいし給へ―◦むかし」〈・宿木〉
(多く「む」が連体形の用法で)…ているような。
「すべて、心に知れ―◦むことをも知らず顔にもてなし」〈・帚木〉

ラム(Charles Lamb)

[1775~1834]英国の随筆家・詩人。繊細なユーモアと庶民的ペーソスにあふれた「エリア随筆」で有名。ほかに姉メアリーとの共著「シェークスピア物語」など。

ラム(lamb)

生後1年以内の子羊。また、その肉。

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精選版 日本国語大辞典 「ラム」の意味・読み・例文・類語

らむ

  1. 〘 助動詞 〙 ( 活用は「〇・〇・らむ・らむ・らめ・〇」。四段型活用。終止形・連体形は、平安時代には「らん」とも書かれ、鎌倉時代には「らう」の形も現われる。活用語の終止形に付くのが原則であるが、ラ変型活用の語には連体形に付く。推量の助動詞 )
  2. 話し手が実際に触れることのできないところで起こっている事態を推量する意を表わす。現在の事態を想像していう例が多い。…であるだろう。今ごろは…しているだろう。
    1. [初出の実例]「引出(で)せず 我が飼ふ駒を 人見つ羅武(ラム)か」(出典:日本書紀(720)白雉四年・歌謡)
    2. 「大殿のさこそ待思召候覧(ラン)」(出典:太平記(14C後)一〇)
  3. 話し手が実際に経験している情況について、その原因・理由・時間・場所などを推量する意を表わす。
    1. (イ) 原因など条件を表わす句を受けて、それを事実について推量する場合。
      1. [初出の実例]「横雲の空ゆ引き越し遠みこそ目言(めこと)(か)る良米(ラメ)絶ゆとへだてや」(出典:万葉集(8C後)一一・二六四七)
    2. (ロ) 疑問詞を受けて、事実の奥の条件を模索する場合。
      1. [初出の実例]「いみじううけばりたり。かうだに、いかで、ほととぎすのことをかけつらん」(出典:枕草子(10C終)九九)
    3. (ハ) 現実の事柄に心を動かして、言外にその原因、理由などを疑う意を表わす場合。
      1. [初出の実例]「こよなかりける山伏心かな。さばかりあはれなる人をさて置きて、心のどかに月日を待ちわびさすらんよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)浮舟)
  4. 連体修飾文節に用いられて、自分の直接経験ではないが、他から聞いたこと、世間一般で言われていることを受け入れて推量する意を表わす。
    1. [初出の実例]「いきてあらん限かくありきて、蓬莱といふらん山にあふやとうみに漕ぎたたよひありきて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))

らむの語誌

( 1 )「らむ」の「む」の部分は、推量の助動詞「む」と同源と考えられる。「ら」は、動詞「あり」と関係づけて説かれ、また、状態を示す接尾語「ら」という説もあるが決しがたい。
( 2 )上代、上一段活用の動詞「見る」に付く時は、「見らむ」となる。他の上一段動詞に「らむ」を伴った用例は見られない。「見らむ」は、中古にも用いられている。この接続は、「べし」の場合と同様のもので、「み」は連用形であるが、古い終止形とか終止形の語尾を落としたものと見る説もある。
( 3 )「らむ」と対立をなす助動詞としては「らし」がある。「らし」が客観性が強いのに対して、「らむ」は主観性が強いとされる。「らむ」は疑問表現に用いるが、「らし」は疑問表現には用いられないという違いは、その意味的特徴を反映したものと見られる。
( 4 )「久方のひかりのどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ〈紀友則〉」〔古今‐春下〕の「らむ」の意味については、推量説、詠嘆説、婉曲説などがあるが、いずれとも決しがたい。
( 5 )鎌倉時代以降、「らう」の形があらわれ、現代の「ろう」に続くほか、方言では「ら」の形でも用いられる所がある。→ろう
( 6 )室町時代には「らん」は完了の「つ」と熟合し、「つらん」「つら」「つろう」となり過去の推量を表わす。これらは現代の方言にまで続き、口語の「たろう」に相当する。→つろうつらつろ


ラム

  1. [ 一 ] ( Willis Eugene Lamb ウィリス=ユージーン━ ) アメリカの理論物理学者。原子核の構造、水素スペクトルの微細構造などを研究。一九五五年ノーベル物理学賞受賞。一九一三年生。
  2. [ 二 ] ( Charles Lamb チャールズ━ ) イギリスの随筆家。エリアの筆名で、ペーソスとユーモアのある随筆を書いた。「エリア随筆」のほか、姉メアリーとの共著の「シェークスピア物語」も有名。(一七七五‐一八三四

ラム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] ram )
  2. 雄の羊。牡羊。
  3. はくようきゅう(白羊宮)[ 一 ]〔遠西観象図説(1823)〕
  4. 敵艦に体当たりして破壊する任務をもつ衝角装備艦。また、艦首の下部に付けた衝角そのものをいう。〔新兵器読本(1959)〕

ら‐・む

  1. ( 完了の助動詞「り」の未然形に推量の助動詞「む」の付いたもの ) …しているだろう。…してあるだろう。また、…しているような。なお、中古以降は、「らん」とも書かれる。
    1. [初出の実例]「汝こそは 男にいませば うち廻る 島の埼々 かき廻る 磯の埼落ちず 若草の 妻持たせ良米(ラメ)」(出典:古事記(712)上・歌謡)

ラム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] lamb ) 子羊。また、子羊の肉。
    1. [初出の実例]「小羊(ラム)の皮を柔らかに鞣(なめ)して」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一四)

ラム

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] rum ) 蔗糖蜜を発酵させてつくる蒸留酒。カクテルや製菓にも用いられる。西インド諸島特産。ラム酒。
    1. [初出の実例]「ラム其他の銘酒店うようよと開店し」(出典:風俗画報‐二三二号(1901)記事)

ラム

  1. 〘 名詞 〙 ( rhm. [英語] roentgen per hour at one meter の略 ) 放射線源の強度をあらわす単位。線源から一メートル離れて一時間に一レントゲンの線量がある時、線源の強度を一ラムとする。

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改訂新版 世界大百科事典 「ラム」の意味・わかりやすい解説

ラム
rum

蒸留酒の一種。ふつうサトウキビの搾汁を濃縮し,砂糖の結晶をとったあとの糖みつ,あるいは搾汁そのものを原料とする。16世紀ころから西インド諸島でつくられ,その後サトウキビ栽培地の拡大にともなって南北アメリカやアフリカに広がり,現在では世界各地でつくられている。ラムという名はrumbullion(イギリスのデボンシャー地方の方言で興奮,騒動の意)の語頭がのこったものという。

 一般に香味の差によって,ヘビー,ミディアム,ライトの3タイプに分けられる。ヘビーラムはジャマイカ島産のものに代表され,色が濃く,複雑で強い香味をもつ。ミディアムラムは,ガイアナ産のデメラララムやマルティニク産のものが知られる。ヘビーにくらべると色がうすく,香りも温和である。ライトラムはキューバ,プエルト・リコその他多くの国でつくられており,無色または淡黄色で,香味が軽い。原料は,ヘビーとミディアムは糖みつを用い,ヘビーはダンダーと呼ぶ蒸留廃液を加えることもある。ライトは搾汁そのものを使うことが多い。糖みつは全糖分58%程度,窒素分1%以上で,灰分の少ないものがよい。これを3倍に希釈・加熱して,糖濃度を9~11%に調節する。発酵は品温が35~40℃まで達するので,高温に強い特殊な酵母が生育し,他の酒類では忌避される酢酸菌や酪酸菌も働いて多くのエステル生成が起こり,これによって複雑な香味が形成される。発酵期間は,ヘビーが6~12日,ミディアムとライトは2~3日程度である。蒸留は単式蒸留機で行うのが基本で,ヘビーとミディアムはこれによるが,ライトは連続式蒸留機によるのがふつうである。熟成はいずれもオークの樽に詰めて行う。長期間の熟成を要するヘビーは5年程度貯蔵するが,ライトは1年程度である。アメリカでは近年ライトを中心としてラムの消費量が急増している。アルコール分40%の製品が多いが,デメラララムなどには世界の酒のうち最もアルコール分の高い75.5%,81.7%のものもある。ラムはまた,カクテル(ダイキリなど)やパンチに用いられ,製菓用にも多用される。

 ラムは18世紀には英国海軍の支給品となり,提督バーノンEdward Vernon(1684-1757)が毎日水割りラムを飲むことをすすめた。彼はグロッグラムという布地のコートを着ていたので〈オールド・グロッグ〉の愛称があり,水割りラムもグロッグgrogと呼ばれるようになったという(他の強い酒,あるいはその水割り,湯割りもグロッグという)。また,提督ネルソンの遺体がラムの樽に漬けられて帰還したので〈ネルソンの血〉という別称もできた。スティーブンソンの《宝島》に登場する海賊たちの歌にもラムがうたわれている。
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ラム
Charles Lamb
生没年:1775-1834

イギリスのエッセイスト,詩人,批評家。法学院の上級弁護士の執事を父としてロンドンに生まれた。給費学校クライスツ・ホスピタルに学び,同級生の詩人コールリジと終生の交わりを結んだ。大学には進学できず,東インド会社の事務員となり,30年余の勤め人生活を送った。この間,姉メアリー・アン(1764-1847)が狂気の発作中に母親を刺殺するという惨事が起こり,以後ラムは姉の保護者として一生独身のまま彼女と同居し,ときおり発作に襲われる姉の面倒を見た。このような人生苦のうちにも彼の文学へのあこがれは消えず,多くの文人と交わり,古典文学を愛読し,観劇を楽しんだ。初期の詩作や劇作は成功せず,新聞・雑誌に雑文を寄稿していたが,姉との共著《シェークスピア物語》(1807)は広く読まれ,また《シェークスピア時代イギリス劇詩人抄》(1808)は忘れられた文学の発掘,再評価として歴史的意義がある。しかしラムの名を高からしめたのは,イギリス・エッセー文学の最高傑作《エリア随筆》である。滋味あふれるエッセーは1820年から主として《ロンドン雑誌》に不定期に掲載され,のち前編(1823),後編(1833)にまとめられた。筆名〈エリア〉は,作者によれば昔同僚だったイタリア人の名というが,〈うそa lie〉の換字(アナグラム)との説もある。姉メアリーも従姉ブリジェットとして登場する。日本でも平田禿木(とくぼく)の名訳(1927-29)以来,愛読者が多い。
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ラム
Lamu

東アフリカ,ケニア北部のラム諸島のラム島東岸にある古い港町。人口約6000。ラム諸島は,紀元1世紀にアレクサンドリアで書かれた《エリトリア海案内記》でピララエ諸島として記録されているものとみられ,当時すでに交易のための港が開けていたという。諸島内で一番古い遺跡は,ラムの隣のマンダ島のタクワのもので,鉄の採掘も行われていたといわれる。次いで北のフェザ島のパテ,ラム島南東部のシェラなどが発展するが,13世紀ころからラムが勢力を伸ばし,パテに取って代わるようになった。早くに凋落したパテや,17世紀以後一時勢力が衰えたマリンディ,あるいは20世紀に近代的発展を遂げたモンバサなどと異なり,ラムは明らかに14世紀ころからほとんど大きな社会変容をうけることなしに継続してきた。その意味では,ラムは東アフリカに形成されたイスラム・アフリカ文化であるスワヒリ文化の伝統を色濃く残す町で,まさにアラブ文化のアフリカ的爛熟の一つのクライマックスをみることができる。ラムは内陸部との接触を通じて綿花,ゴマ,木材,とくに沿岸に自生するマングローブ,木炭,ヤシ油などの輸出港であるとともに,木彫,彫金細工,象牙細工などの工芸品の産地でもある。東アフリカのイスラム教育の中心であるリアダ・モスクなどモスクを含む多くのスワヒリ建築,特色あるイスラム祝日の儀礼などで有名であり,近年はいわゆるヒッピーの聖地の一つとしても知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラム」の意味・わかりやすい解説

ラム(Charles Lamb)
らむ
Charles Lamb
(1775―1834)

イギリスの随筆家。ロンドンに生まれる。名門パブリック・スクールのクライスツ・ホスピタルに学び、生涯の友コールリッジを知るが、経済的理由のほかに、吃音(きつおん)であったこともあって大学へは進学しなかった。卒業後しばらく南海会社に勤めたあと東インド会社へ移り、50歳で辞めるまで33年間、忠実な会計係として勤務した。1796年、姉のメアリーMary Ann Lamb(1764―1847)が精神錯乱の発作で母親を刺し殺すという悲劇が起こり、彼はこの姉のめんどうをみようと決心して生涯独身を決意。そういう彼自身も同じ病気で一度入院することになり、精神病の暗い影が姉弟にずっとついて回った。姉の発作はときどき起こったので、近所の手前をはばかり、しばしば引っ越ししなくてはならなかった。このころが彼のどん底の時期であったが、彼はいつも駄洒落(だじゃれ)を考えるのを楽しみにしていたという。文学的活動としては、初めは主として詩を書き、98年には有名な『なつかしの面影(おもかげ)』を含むロイドCharles Lloyd(1775―1839)との共著詩集『ブランク・バース』を出した。1807年には、姉と共著で『シェークスピア物語』(姉は喜劇、ラムが悲劇を受け持つ)を出したほか、児童向けの本がいくつかある。ついで翌08年には学問的にも評価されている『イギリス劇詩人名品抄』が出て、このころからようやく生活の安定を得るようになった。

 1820年、45歳から『ロンドン雑誌』に随筆を書き始め、23年に『エリア随筆』として出版され、彼の名を不朽のものとした。33年には『続エリア随筆』が出た。愚かな人間をいとおしみ、しみじみとした味わいを漂わせるユーモアはイギリス文学史上でも特異なもので、いまも愛読者が絶えない。東洋的文人趣味に通ずるところがあるせいか、明治以来わが国で心を寄せる者が少なくない。文人、学者に多くの友人をもっていたラムは、書簡にもみるべきものがある。

外山滋比古

『日夏耿之介・燕石猷訳『イギリス抒情詩集』(原題『ブランク・バース』1952・河出書房)』


ラム(Willis Eugene Lamb Jr.)
らむ
Willis Eugene Lamb Jr.
(1913―2008)

アメリカの理論物理学者。ロサンゼルスに生まれる。カリフォルニア大学化学科を卒業(1934)後、大学院でオッペンハイマーに師事し学位を取得(1938)。コロンビア大学ハーバード大学、オックスフォード大学ほか多くの大学の教授を務める。レザフォードRobert Retherford(1912―1981)の協力のもとに超短波磁気共鳴法によって水素原子スペクトルの微細構造を観測し、朝永振一郎(ともながしんいちろう)、シュウィンガーくりこみ理論の実験的根拠の一つとなったラム・シフトを発見した。1955年、「水素スペクトルの微細構造に関する発見」によりノーベル物理学賞を受ける。電子の磁気モーメントを精密測定したクーシュと同時受賞であった。

[大友詔雄]

『中村誠太郎・小沼通二編『ノーベル賞講演 物理学 第7巻』(1979・講談社)』


ラム(Wirufredo Lam)
らむ
Wirufredo Lam
(1902―1982)

キューバ生まれの画家。父は中国人、母は白人と黒人の混血であった。ハバナ美術学校を出てからスペインで画家の修業を積んだ。1937年パリに移住し、ピカソを知り、その後シュルレアリスムの運動にも参加した。41年にはハバナに帰国し、以後はアメリカ各地を転々とする。この間、シュルレアリスムの影響を発展させて、独特の作風を確立した。その絵画は、故郷であるキューバの民族的伝統から多くを得たといわれ、簡潔な抽象形態のなかにトーテムをはじめとする土俗的信仰や民間伝承のイメージが展開して、現代の合理主義を超えた神秘主義的で初源的な生命力を喚起させる。

[石崎浩一郎]


ラム(羊肉)
らむ
lamb

食用の羊肉のうち、生後1年以内のヒツジのものをいう。1年以上のものはマトンmuttonとよばれる。マトンに比べ、肉質が柔らかく、においも弱い。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラム」の意味・わかりやすい解説

ラム
rum

糖蜜や甘蔗汁(→サトウキビ)を発酵させてつくる蒸留酒西インド諸島が原産地で,最も古い記録は 1650年頃のバルバドスに関するもの。初め rumbullionと呼ばれていた。ジャマイカキングストンガイアナのデメララは特産地として有名。アルコール濃度は 40~80%で,糖を原料とするため糖化工程がなく,ほかの蒸留酒より原料の風味を残す。重い風味のヘビータイプが旧イギリス植民地のジャマイカを中心に発達し,19世紀末から軽い風味のライトタイプが旧スペイン植民地のプエルトリコなどでつくられるようになった。独特の香気をもち,カクテルや菓子の味つけ,たばこの香りつけにも使われる。頭髪用香油のベーラムは,ベー油をラムに溶かしたもの。(→

ラム
RAM; random access memory

ランダムアクセスメモリ。随時に記憶データの読み出しや書き換えを行なえる記憶装置 (メモリ) をいう。随時にとは非常に短いアクセス時間内を意味する。読み書き可能なラムに対して読み出し専用のメモリをロム ROMという。情報の保持の仕方によりDRAM (dynamic RAM) とSRAM (static RAM) に分けられる。前者はコンピュータのメインメモリ (主記憶装置 ) などに,後者はキャッシュメモリに使われる。最近は半導体集積回路 (IC) で実現されているために ICメモリとも呼ばれているが,昔は,磁気デバイスで実現された。一般に電源を切ってしまうと記憶した情報を保持することはできない。

ラム
Lamb, Charles

[生]1775.2.10. ロンドン
[没]1834.12.27. ミドルセックス,エドモントン
イギリスの随筆家。東インド会社に勤務 (1792~1825) するかたわら,文筆活動に従事。『シェークスピア物語』 Tales from Shakespeare (1807) ,『ユリシーズの冒険』 The Adventures of Ulysses (08) は古典を年少の読者の身近な読み物としたもので,前者は姉メアリーとの共著。名作『エリア随筆』 Essays of Elia (23) は,1820~23年に『ロンドン・マガジン』に寄稿したエッセーを集めたもので,33年に『後集』 Last Essaysが出た。自伝的なものをはじめ身辺のくさぐさの事柄を取上げ,しみじみとしたユーモアと情趣をたたえるそれらの作品は,イギリス伝統の随筆文学の頂点に立つもの。また,エリザベス朝演劇の批評家としてもすぐれた業績を残している。

ラム
Lamb, Willis Eugene, Jr.

[生]1913.7.12. カリフォルニア,ロサンゼルス
[没]2008.5.15. アリゾナ,トゥーソン
アメリカの物理学者。カリフォルニア大学を卒業。第2次世界大戦中はコロンビア大学放射線研究室で研究を続けた。同大学教授 (1948) ,スタンフォード大学教授 (51) ,オックスフォード大学教授 (56) ,エール大学教授 (62) ,アリゾナ大学教授 (74) 。 1947年学生の R.レザフォードとともに水素原子の準位についてのラムシフトを発見,くりこみ理論のよい検証材料となった。その後もマイクロ波技術を駆使したスペクトル線の微細構造の分析を通じて原子の励起状態の研究とその理論的解析を行なった。 55年 P.クッシュとともにノーベル物理学賞を受賞した。

ラム
Ram, Jagjivan

[生]1908.4.5. ビハール,アラ
[没]1986.7.6. デリー,ニューデリー
インドの政治家。不可触民の出身。バナラス,カルカッタ両大学に学び,学生時代から反英不服従運動に参加。 1936~46年全インド被抑圧階級連盟会長をつとめた。 46年独立前の暫定内閣で労相となってから 30年以上にわたり国民会議派にあって,労相,通信相,農相,国防相などを歴任。 69年の国民会議派大分裂では I.ガンジーを支持,69~71年左派国民会議派の総裁。 77年の総選挙では左派国民会議派を離党,民主国民会議派を結成し,ガンジー敗退の一因をつくった。同年3月 S.デサイ内閣の国防相に就任。 79年1~7月副首相兼国防相。

ラム
Lamb, Mary Ann

[生]1764.12.3. ロンドン
[没]1847.5.20. ミドルセックス,エドモントン
イギリスの文筆家。 C.ラムの姉。 1796年狂気の発作で母親を殺害。その後は弟の手厚い保護のもとに暮し,同様に狂気の性向に悩む弟をあたたかい共感をもって励ました。弟との共著『シェークスピア物語』 Tales from Shakespeare (1807) は,シェークスピアを子供向きに書き換えたもので,長く愛読された。 20編のうち 14編,喜劇の部分を分担した。

ラム
Lamu

ケニア南東部,本土沿岸のインド洋上にあるラム島に位置する港町。かつてはペルシアの植民地で,ザンジバル王国の支配下にあり,19世紀末までアラブ人による金,象牙,奴隷貿易の中継地として繁栄。現在もペルシア湾岸諸国のダウ船 (帆船) が訪れる。アラブやペルシアの史跡が残る。奴隷貿易廃止とともに衰微し,現在は若干の工業が行なわれる。東アフリカで最古のスワヒリ人集落で保存状態もよく,2001年世界遺産の文化遺産に登録。人口約 8000。

ラム
Lam, Wifredo

[生]1902.12.8. サグアラグランデ
[没]1982.9.11. パリ
キューバの画家,彫刻家。 1937年パリへ出てシュルレアリスム運動に参加。 40年にアメリカに移ったが,その後パリに定住。抽象美術に近い感覚で呪術的なイメージや熱帯的な風景をテーマとした作品が多い。主要作品『密林』 (ニューヨーク近代美術館) など。

ラム
ram

(1) ガイドに沿い,圧力または衝撃を与える部品。水圧機や水圧だめなどでシリンダ内を往復運動するプランジャ状の円柱。 (2) 形削り盤や立削り盤で,フレームの案内面を水平または上下に往復運動する部分で,刃物台が取付けられ早戻り運動をする。 (3) 杭打ち機の落し槌,ドロップハンマ。

ラム
lamb

子羊またはその肉。羊肉は普通マトンといい,肉質が柔らかく調理用とされるが一種の臭みがある。生後 12ヵ月以内の子羊の肉をラムと呼び,上級品として好まれる。

ラム

衝角」のページをご覧ください。

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百科事典マイペディア 「ラム」の意味・わかりやすい解説

ラム(酒)【ラム】

サトウキビの絞り汁か糖蜜を原料として発酵,蒸留し,カラメルで赤褐色に着色したアルコール度の強い(60〜80%)酒。サトウキビ栽培の盛んな世界各地で作られるが,西インド諸島のジャマイカラム,ガイアナのデメラララムが有名。そのまま飲用に,またカクテル用にするが,特有の香気のため,菓子,タバコなどの着香料にも使用。
→関連項目カクテルダイキリバルバドス

ラム

米国の物理学者。カリフォルニア大学を出て,1948年コロンビア,1951年スタンフォード,1962年イェール各大学教授。1947年レザフォードR.C.Retherfordとともに原子線の磁気共鳴を用い,いわゆるラム・シフトを見いだし,量子電磁力学の発展に寄与。1955年P.クッシュとともにノーベル物理学賞。

ラム

英語のラムlambは子羊のこと。その毛皮はコートや敷物にされ,アストラカンが代表的。皮(ラムスキン)も衣料品や本の装丁に利用。また,剪毛(せんもう)した毛はラム・ウールと呼ばれ高級な毛織物となる。子羊の肉もラムという。→羊肉

ラム

英国の随筆家。狂気の発作から母を刺殺した姉メアリー・アンを保護しつつ,一生独身で過ごした。ロンドンの東インド会社に勤めながら随筆文学の傑作《エリア随筆》を書いた。ほかに詩,文芸批評,書簡集,また姉との共著による《シェークスピア物語》(1807年)などがある。

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飲み物がわかる辞典 「ラム」の解説

ラム【rum】


キューバ、ジャマイカ、ドミニカ、プエルトリコなどの西インド諸島に産する蒸留酒。砂糖きびの搾汁を煮詰めて砂糖を分離したあとに残る副産物の糖蜜を発酵させ、蒸留、熟成させたもの。色により無色の「ホワイトラム」、薄い褐色の「ゴールドラム」、濃い褐色の「ダークラム」が、また風味の濃厚さにより「ライトラム」「ミディアムラム」「ヘビーラム」がある。カクテルの材料や焼き菓子の風味づけにも用いる。アルコール度数は40~50度。

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デジタル大辞泉プラス 「ラム」の解説

ラム〔アルバム〕

イギリスのミュージシャン、ポール・マッカートニーのアルバム。当時の妻、リンダ・マッカートニーとの共作。1971年発表。全英アルバムチャート1位、全米アルバムチャート2位を記録。原題《Ram》。

ラム〔自動車〕

アメリカのクライスラーがダッジのブランドで1981年から製造、販売している乗用車。2ドア、4ドアのピックアップトラック。ダッジの人気車種の一つとして知られる。

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とっさの日本語便利帳 「ラム」の解説

ラム

サトウキビの搾り汁を煮詰めて砂糖の結晶を分離し、残った糖蜜を発酵して蒸留したもの。熟成方法による色の違いで、ホワイト、ゴールド、ダークに分類。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

栄養・生化学辞典 「ラム」の解説

ラム

 (1) 蒸留酒の一種.カンショ糖や糖蜜を原料とする.(2) 生後1年以内の子羊の肉.それ以上の年齢のものはマトンといって区別する.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

367日誕生日大事典 「ラム」の解説

ラム

生年月日:1764年12月3日
イギリスの文筆家
1847年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のラムの言及

【毛皮】より

…油汚れと汗は,消毒用エタノールに酢を少々入れ,水で2倍程度に薄めた液でふく。スワカララム,シール,ビーバーにはベンジンをしみこませた綿かガーゼでなでるようにする。いずれの場合も,最後に風通しのよい所で陰干しにする。…

【羊肉】より

…食用にするヒツジの肉のうち,生後1年未満のヒツジからの肉をラムlamb,生後20ヵ月以上の成熟したヒツジからの肉をマトンmuttonという。日本での羊肉の生産量は208t(1995)で,ほとんど全部輸入に頼っている。…

【エッセー】より

…アディソン,スティールら18世紀の文人の手にかかると,それは初期のジャーナリズムの文体の一部となった。しかしエッセー文学の頂点はチャールズ・ラムの《エリア随筆》(1823,33)であり,彼こそ〈エッセイスト〉以外の名前では呼ぶことのできない文人であった。イギリス人好みのユーモア(気質のゆとり)を彫琢(ちようたく)の名文で綴ったものである。…

【エリア随筆】より

…イギリスのエッセイスト,C.ラムの随筆集。The Essays of Elia(1823)とThe Last Essays of Elia(1833)の前後2編に52のエッセーを収める。…

【児童文学】より

…しかし1744年にニューベリーJ.Newberyがロンドンのセント・ポール大聖堂前に,世界で初めての子どものための本屋をひらいて,小型の美しい本を発行し,伝承歌謡を集めた《マザーグースの歌(マザーグース)》やO.ゴールドスミスに書かせたと思われる初の創作《靴ふたつさん》を送り出した。しかし18世紀を支配したJ.J.ルソーの教育説はたくさんの心酔者を出して,児童文学は型にはまり,C.ラムは姉メアリーとともにこの風潮に反抗して,《シェークスピア物語》(1807)などを書いたが,児童文学が自由な固有の世界となるには,ペローやグリム,アンデルセンの翻訳をまたなければならなかった。しばしば子どもたちの実態を小説に描いたC.ディケンズは《クリスマス・キャロル》を1843年にあらわし,E.リアは滑稽な5行詩による感覚的なノンセンスの楽しみを《ノンセンスの本》(1846)にまとめた。…

【蒸留酒】より

…後者によって得られるグレーンウィスキーは香味が軽く,これをモルトウィスキーと調合することによって,現在スコッチの主流となったブレンデッドウィスキーがつくられるようになった。単式蒸留機の蒸留酒は,アルコール以外の揮発成分を多く含み,原料由来の香りを有し,現在ではモルトウィスキー,コニャック,ヘビーラム,ミディアムラム,キルシュ,テキーラ,および泡盛を含む日本の本格焼酎などが,これで蒸留されている。連続式蒸留機の蒸留酒は,アルコールの純度が高まるほど原料の特徴が失われ,酒はソフト化する。…

【中国酒】より

…(7)その他 ここに区分されるものはおもに外国起源の酒で,洋酒としている文献もある。白蘭地(ブランデー),威士忌(ウィスキー),金酒(ジン),俄斯克(ウォッカ),蘭母酒(ラム)などで,これらのうち烟台の金奨白蘭地は歴史も古く,全国名酒に数えられている。【鈴木 明治】。…

※「ラム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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