日本大百科全書(ニッポニカ) 「リシッポス」の意味・わかりやすい解説
リシッポス
りしっぽす
Lysippos
生没年不詳。古代ギリシアの彫刻家。シキュオンの出身で、紀元前370~前310年ごろ活躍。青銅彫刻に優れ、アレクサンドロス大王の宮廷彫刻家として王の肖像を制作、その大理石による模作が若干残されている。長い作家活動を通して約1500点の作品を残したと伝えられるが、それらはおそらく、彼の大きな工房で制作されたものと推察される。彼はまた、それまでのポリクレイトスの人体比例率を改め、自然に学んだ新しい人体の理想像を定めた。彼の比例率によれば、頭部は全身像の8分の1を占め、人体はいっそう優美になった。ローマ時代の模作で知られるバチカン美術館の『アポクシュオメノス(汗を落とす青年像)』は、この新しい比例率を示すものである。このほか彼の様式を伝える作品に、デルフォイの『アゲラオス』、ナポリ国立考古美術館の『ファルネーゼのヘラクレス』などがある。
[前田正明]