改訂新版 世界大百科事典 「リタイ」の意味・わかりやすい解説
リタイ
Lithai
生没年:?-1374?
タイのスコータイ朝第5代の王(在位1347-74?)。ラーマカムヘン大王の孫。1340年以来副王としてサッチャナーライにあったが,47年軍を率いてスコータイに戻り,奪われていた王位を奪者から奪還して秩序を回復,みずから王位につきスコータイ朝中興の祖となった。50年南方にアユタヤが興ると,これとの修交に努めている。武人としてのほか彼の名はタイ文学史上《トライプーム(三界経)》の著者として名高い。同書は彼が副王であった1345年に著した在家者向きのタイ語の啓蒙的仏教書で,スリランカ仏教の強い影響が認められる。61年スリランカに留学したパン(ミャンマーのマルタバン?)の高僧マハーサーミー・サンカラートをスコータイに招請し,これに寄進した精舎においてみずから短期間出家生活を送り,崇仏の範を示した。こうした仏教に対する傾倒から王はタイ史上マハータンマラーチャー(大仏法王)1世とも呼ばれている。
執筆者:石井 米雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報