改訂新版 世界大百科事典 「リュウキュウコザクラ」の意味・わかりやすい解説
リュウキュウコザクラ
Androsace umbellata (Lour.) Merr.
サクラソウ科トチナイソウ属の小型の一,二年生のロゼット植物。コケサクラソウともいう。東南アジアに広く分布し,日本では沖縄に多い。草地にはえ,葉をロゼット状に展開する。葉柄があり,葉身は卵円形で長さ幅とも5~15mm,縁に三角形の鈍牙歯があり,基部は浅い心臓形またはくさび形。4~5月に,直立した高さ5~15cmの花茎を伸ばし,頂の散形花序に1~10花をつける。小花柄は細く,長さ1~5cm,基部に苞葉がある。萼は深く5裂し,果実時には星状に平開する。花冠は白色で直径4~7mm,筒部は短く,たかつき状に開く。蒴果(さくか)は球形で径3~4mm。全草に短い開出毛がある。本州西部から沖縄にかけて,また朝鮮,中国,ウスリー地方から,インド,ベトナム,フィリピンに広く分布する。漢方では全草を解毒,痛み止めに用いる。まれに観賞のために栽培される。
トチナイソウ属Androsace(英名rock jasmine)は北半球の高山から熱帯域にかけて約100種あり,いずれも小型の草本であるが,花がかわいいのでロックガーデンや山草として栽植されるものが数種ある。
執筆者:井上 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報