改訂新版 世界大百科事典 「レナ事件」の意味・わかりやすい解説
レナ事件 (レナじけん)
ロシアの東シベリアのレナ金鉱で起こった鉱山労働者銃殺事件。1912年4月4日に発生した。鉱山はイルクーツクから北東へ約2000kmのレナ川支流ビチム河畔のタイガにあった。1908年に鉱山はレナ金鉱株式会社となり,イギリス資本が投下されており,経営陣にはロシアの巨大銀行資本家が参加した。また,株主にはウィッテなどのロシアの政治家や高級官僚がいた。鉱山での労働条件はきわめて過酷であった。12年2月末,ストライキが自然発生的に発生し,やがてすべての労働者(6000人以上)がそれに参加した。ストライキ委員会が結成され,1日8時間労働制,賃上げ,罰金廃止などの要求が提出された。4月4日,経営側およびツァーリ政府はストライキ指導者らを逮捕したため,労働者たちがその釈放を要求しておしかけたところを軍隊が発砲し,270人が死亡した。この事件を契機にして,1905年革命以来沈滞していたロシアの労働運動は再び高揚していった。
執筆者:高田 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報