クック氏(読み)クックし

改訂新版 世界大百科事典 「クック氏」の意味・わかりやすい解説

クック氏 (クックし)

10世紀,中国の支配から初めて自立したベトナムの土豪。曲氏とも書く。ベトナムは前110年,漢の武帝の南越遠征後,約1000年にわたって中国の直接支配におかれた。唐代では交州ハノイ)に安南都護府が設置され,雲南の南詔,中部ベトナムのチャンパのおさえとなっていたが,唐末906年以降,在地土豪のクック・トゥア・ズー(曲承裕)が,907年にはクック・ハオ(曲顥)がベトナム北部を治める静海軍節度使に任じられた。915年ハオの子クック・トゥア・ミ(曲承美)は中原の梁に遣使して節度使に任ぜられたが,これは南漢劉氏の介入を招き,923年の梁滅亡とともに南漢軍は交州に入ってトゥア・ミを捕らえ,将李進を交州刺史とした。しかし彼も931年クック氏の旧将ズオン・ディン・ゲ(楊廷芸)に追われ,ベトナムはまたその独立を回復した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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