中国が、中国南部、インドシナ半島北東部をさして用いた地名。範囲は時代によって異なる。紀元前106年、漢の武帝によって設置された交趾(こうち)刺史部は、漢朝の南疆(なんきょう)である南海、合浦(がっぽ)(広東(カントン)省)、儋耳(たんじ)、珠崖(しゅがい)(海南(かいなん/ハイナン)島)、蒼梧(そうご)、鬱林(うつりん)(広西(こうせい/カンシー)チワン族自治区)、交趾、九真、日南(ベトナム北・中部)の9郡を統轄した。紀元後203年、後漢(ごかん)の献帝はこれを交州と改称し、州治を蒼梧郡の広信(現広西チワン族自治区蒼梧)に置いた。三国時代、9郡は呉(ご)の領有するところとなったが、呉は交趾郡の南海貿易における重要性に注目し、交州の州治を交趾郡の竜編(ベトナム北部、ハア・バク省)に移し、晋(しん)、宋(そう)、斉(せい)、隋(ずい)の歴朝もこれに倣った。唐初、高祖李淵(りえん)は622年安南都護府(あんなんとごふ)を設け、交州をその管轄下とし、府治を大羅(だいら)城(現ハノイ近郊)に置いた。その際、交州を形成していた9郡は改編されて11州となり、交州は現ベトナム北部のハア・ナム・ディン(河南定)省一帯をさす名称となった。
[陳 荊 和]
『杉本直治郎著『東南アジア史研究1』(1956・日本学術振興会)』
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