シクロプロペニリウムイオン

化学辞典 第2版 の解説

シクロプロペニリウムイオン
シクロプロペニリウムイオン
cyclopropenylium ion

C3H3(39.06).ヒュッケル則で規定される最小の芳香族分子(n = 0,2π電子系).陽電荷は三員環内で非局在化し,D3h 構造を有する.3-クロロシクロプロペンを五塩化アンチモンや四フッ化ホウ酸銀と反応させると,対陰イオンがSbCl6,BF4のシクロプロペニリウム塩がそれぞれ生成する.これらはいずれも不活性気体中-20 ℃ 以下で安定であるが,室温では数時間で分解する.また,湿気によっても容易に分解する.pKR値(-7.4±0.1)の比較から,アリルカチオンに比べ75 kJ mol-1 程度安定であるとされている.この値にはひずみエネルギーが含まれていないため,芳香族による安定化エネルギーはさらに大きいと考えられる.量子化学計算により,共鳴エネルギーは250 kJ mol-1 以上と見積もられている.1H NMR(ニトロメタン,-20 ℃)δ 11.20(SbCl6塩),13C NMR(FSO3H-SbF5,-70 ℃)δ 175.9,J13C-H265 Hz.安定な三置換誘導体が多数合成され,単離されている.置換基としては,ハロゲン類,アリール基アミノ基,チオール基などがある.[CAS 26810-74-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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