知恵蔵 「スティーブ・ジョブズ」の解説
スティーブ・ジョブズ
76年、同じく創業者の一人であるスティーブ・ウォズニアック氏が自作したコンピューター、アップルIの将来性を見抜き、販売を始める。77年にはアップルコンピューター社を設立。同年に発売したアップルⅡが爆発的に売れ、80年には2億ドルを超える資産を手にして、20代でフォーブスの長者番付に載るなど世間の注目を集めた。ちなみに、パソコンとして初めてGUI(Graphical User Interface)を採用しており、かつ、アップル社を代表している「マッキントッシュ(Macintosh)」は、ジョブズこだわりの製品である。
85年、ジョブズはマッキントッシュの売り上げ不振などを理由に解雇されるが、その後、教育やビジネス市場向けワークステーションの開発製造会社「NeXT社」を創業し、独自OS「NeXT OS」搭載のコンピューターを発売する。また、86年には、ルーカスフィルム社のコンピューター関連部門を買収して「ピクサー社」を設立しCEO(最高経営責任者)に就任する。ピクサー社は95年に世界初のフルCG映画「トイ・ストーリー」などで成功を収めている。
97年には、当時低迷するアップル社に暫定CEOとして復帰し、斬新なデザインのパソコン「iMac」をヒットさせる。2000年には正式にCEOとなり、01年にNeXT社のOSを基本にしたMac OSの後継となる「Mac OS X」を発売。また同年には、携帯型音楽プレーヤー「iPod」と音楽再生・管理ソフト「iTunes」をベースにした音楽配信ビジネスを開始し成功を収める。さらに、07年には「iPhone」でスマートフォン市場に参入し、「iPhone」をスマートフォンブームの火付け役とする。10年には「iPad」で、タブレット型デバイスという新たな市場をリードするなどと、ここ数年でアップル社は数々のヒット商品を出し続け、11年には、アップル社の売上高が過去最高となった。見事にアップル社の再建を果たしたジョブズだったが、11年8月24日、健康問題を理由にCEOを退任すると発表した。後任は、ティム・クックCOO(最高執行責任者)で、ジョブズは取締役会長となる。
ジョブズは妥協を許さない完璧主義者であり、その強引な経営方針を批判する声もあるが、反面、強いカリスマ性は多くの人に評価される。
また、人を魅了するプレゼンテーションや数々の名言、格言が有名。iPhone発表時には「本日、アップルは電話を再発明する」という言葉を、他社幹部をアップル社に誘った際には「残りの人生も砂糖水を売ることに費やしたいか、それとも世界を変えるチャンスが欲しいか?」という言葉を残している。
11年10月5日、ジョブズが死去したことが、米アップル社によって発表された。享年56。
(横田一輝 ICTディレクター / 2011年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報