チオ炭酸(塩)(読み)チオタンサンエン

化学辞典 第2版 「チオ炭酸(塩)」の解説

チオ炭酸(塩)
チオタンサンエン
thiocarbonic acid(thiocarbonate)

H2CO3のOをSで置き換えたものをチオ炭酸,その塩をチオ炭酸塩(化合物命名法補訂7版(2000年)の名称)という.部分置換のものも得られているが,H2CS3およびその塩が得やすいので,このトリチオ炭酸(塩)(2005年IUPAC特性置換基命名法ではトリスルフィド炭酸(2-)(塩))を,普通,チオ炭酸(塩)という.酸:H2CS3(110.22).Na2CS3とHClとの反応などで得られる.赤色の油状液体.水に不溶.水と反応して,CS2,H2S,Sを生じる.[CAS 594-08-1].
塩:アルカリ金属塩は,硫化アルカリ水溶液とCS2との反応で生じる.重金属などの塩は,アルカリ金属塩と各金属塩の複分解などで得られる.アルカリ金属などの塩はイオン結晶で,平面三角形型のCS32-を含む.アルカリ金属塩は黄色の結晶で,水に可溶.重金属などの塩はより色が濃く黄~赤色で,水に難溶のものが多い.水溶液はしだいに分解してCS2を遊離する.さらに空気に触れると,ポリ硫化物チオ硫酸塩硫黄などを析出する.トリチオ炭酸塩水溶液にSを加えて加熱するとテトラチオ炭酸塩 [S2-C-S-S]2- を生じる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報