改訂新版 世界大百科事典 「ハードボイルド映画」の意味・わかりやすい解説
ハードボイルド映画 (ハードボイルドえいが)
hardboiled-detective film
〈ハードボイルド〉という英語に〈非情な〉〈冷酷な〉というニュアンスが生じたのは19世紀末であるといわれているが,アメリカでは文学の用語から映画にも使われるようになり,非情,冷酷なタッチの映画がこの名で呼ばれ,その典型的な主人公が一匹狼的な私立探偵であることから,〈ハードボイルド・ディテクティブ・フィルム〉と命名され,探偵映画(ディテクティブ・フィルム)の変種として一つのジャンルとみなされるに至った。
ダシール・ハメット原作,ジョン・ヒューストン監督の《マルタの鷹》(1941),ジェームズ・M.ケイン原作,ビリー・ワイルダー監督の《深夜の告白》(1944),レイモンド・チャンドラー原作,ハワード・ホークス監督の《三つ数えろ》(1946)などがその原型とされているが,この〈ハードボイルド映画〉も含めて,1940年代,第2次世界大戦中から流行しはじめた暗い非情なタッチのアメリカの犯罪映画を総括して〈フィルム・ノワール〉と呼ぶこともある。
→フィルム・ノワール
執筆者:柏倉 昌美
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