告白(読み)コクハク

デジタル大辞泉 「告白」の意味・読み・例文・類語

こく‐はく【告白】

[名](スル)
秘密にしていたことや心の中で思っていたことを、ありのまま打ち明けること。また、その言葉。「罪を告白する」
キリスト教で、自己の信仰を公に表明すること。また、自己の罪を神の前で打ち明け、罪の許しを求めること。
[補説]書名別項。→告白
[類語]自白自供白状打ち明ける懺悔口を割る泥を吐く話す語るしゃべる物言う口を利く伝える告げる言う述べる物語る明かす説明する述懐する口外こうがいする他言たごんする言い出す発言する口に出す口にする吐く漏らす口走る抜かすほざくうそぶくしゃべくる言い掛ける言い始める言い話し込む話しかける口に上る口の端に掛かる口を開く口を切るおっしゃる仰せられるのたま申し上げる申し述べる申す言上ごんじょうする

こくはく【告白】[書名]

町田康長編小説。明治26年(1893)に起きた「河内十人斬り」と呼ばれる殺人事件をモチーフとした作品。平成17年(2005)、第41回谷崎潤一郎賞受賞。平成18年(2006)、第3回本屋大賞にて7位入賞。

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精選版 日本国語大辞典 「告白」の意味・読み・例文・類語

こく‐はく【告白】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 心の中に思っていたことや秘密にしていたことなどを隠さないでありのまま告げること。
      1. [初出の実例]「雄弁とは辞令を巧にし身振りを弄するの謂でない、自信を告白するに過ぎない」(出典:戦へ、大に戦へ(1904)〈姉崎嘲風〉)
      2. [その他の文献]〔晉書‐徐邈伝〕
    2. 世間に告げ知らせること。広告。
      1. [初出の実例]「告白〈略〉明治四年辛未九月十九日よりして予私塾を開き英学を教授す」(出典:新聞雑誌‐一八号・明治四年(1871)一〇月)
    3. キリスト教で、自分の信仰を表明したり、過去の罪を告げて神の許しを乞うたりすること。
      1. [初出の実例]「信徒の生涯〈略〉悔改 告白」(出典:讚美歌(1903頃)目次)
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] ( 原題[ラテン語] Confessiones ) 宗教文学書。一三巻。アウグスティヌス著。四〇〇年頃成立。回心にいたるまでの自叙伝的回想を中心に、自分の生活を反省し、神の恩恵に対する感謝と賛美を語ったもの。ローマ帝政末期の哲学、宗教思想が示され、告白文学の傑作とされる。告白録
    2. [ 二 ] ( 原題[フランス語] Les Confessions ) 自伝。二部一二編。ルソー著。一七六五~七〇年成立、死後、刊行された。誕生から一七六六年サンピエール島を去るまでの内面的自己形成の跡をたどったもの。厳しい自己省察と強烈な自我意識とが赤裸々に語られ、告白文学の傑作とされる。告白録。懺悔録

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改訂新版 世界大百科事典 「告白」の意味・わかりやすい解説

告白 (こくはく)
Confessiones

アウグスティヌスの代表作の一つ。397年から400年にかけて書かれた13巻の書。そのうち1~9巻は自伝であって,幼少年時代の思い出,学業,読書,交遊,マニ教への入信とそこからの離脱,32歳のときの回心,その後しばらくのカッシキアクムでの生活と母モニカの死を記録している。第1巻冒頭に〈あなたはわたくしたちをあなたに向けて造られた。それゆえ,わたくしたちの心はあなたの内に憩うまでは平安を得ない〉とあり,この自伝は罪を表白しつつ神の愛と導きをたたえていることから,《懺悔録》とも《賛美録》とも訳される。後半の10~13巻は神の認識を主題とする思索である。ここに見る記憶論や時間論は,現代哲学においてもつねに顧みられる重要なもの。〈時間とは何か。だれもたずねないとき,わたくしは知っている。しかし,たずねられて説明しようとするとわたくしは知らない〉(11巻14章)の句は有名である。11~13巻は旧約聖書創世記》1章の解釈であって,これは神と世界の二元論を主張するマニ教と対決して,キリスト教の神観を明示しようとした戦闘的なものである。そこでこの書の全体の統一がどこにあるかがよく論ぜられるが,ただの自伝ではなく,罪の許しの体験を通じて宇宙と歴史の支配者たる神をたたえ,同時にキリスト教とマニ教の相違を示すという意図から書かれたといえる。その回心のできごと修道士の模範としても書かれたので,単なる記録ではない高度の文学性を備えている。
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普及版 字通 「告白」の読み・字形・画数・意味

【告白】こくはく

明らかにして告げる。〔晋書、儒林、徐伝〕(足下)小を縱(はな)ちて、耳目と爲すべからざるなり。豈に善人君子にして、其の事に非ざるを干(をか)して、多く白するらんや。君子の心、誰(たれ)をか毀(そし)り誰をか譽めん。

字通「告」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「告白」の意味・わかりやすい解説

告白
こくはく
confession

キリスト教では、自分の犯した罪を痛悔し、それを神の前で述べて許しと恩恵を願うこと。プロテスタントでは「信仰告白」をさす。告白の行為には、神の救いと慈悲への信頼が込められており、告白を通じて、神の救いのわざを賛美するのである。『新約聖書』は、救いはイエス・キリスト十字架と復活のわざによって成就(じょうじゅ)されたと告げ、キリストへの信仰を告白することを求めている。カトリック教会では「告解(こっかい)の秘蹟(ひせき)」を略して告白というが、この場合、罪は司祭に告白される。

[門脇佳吉]

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デジタル大辞泉プラス 「告白」の解説

告白〔小説〕

①湊かなえのミステリー小説。2007年に第1章にあたる「聖職者」が第29回小説推理新人賞を受賞、その後雑誌連載と書き下ろし原稿を加えて、2008年に単行本刊行。同年の週刊文春ミステリーベスト10の第1位に選出。
②2010年公開の日本映画。①を原作とする。監督・脚本:中島哲也、撮影:阿藤正一、尾澤篤史。出演:松たか子、岡田将生、木村佳乃、高橋努、井之脇海、田中雄土ほか。娘を殺された中学校の女性教師が犯人である生徒たちを追い詰めていくサスペンス映画。第34回日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞受賞。第53回ブルーリボン賞作品賞、助演女優賞(木村佳乃)受賞。

告白〔ノンフィクション〕

旗手啓介によるノンフィクション。日本が初めて本格的に参加したカンボジアでのPKO(国連平和維持活動)における、一人の文民警察官の死の真相を追ったNHKのドキュメンタリー番組の書籍化。2018年刊行、同年第40回講談社ノンフィクション賞を受賞。

告白〔曲名:竹内まりや〕

日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライターの竹内まりや。1990年発売。第32回日本レコード大賞最優秀ポップス・ボーカル賞(ポップス・ロック部門)受賞。日本テレビ系列で放映されたドラマ「火曜サスペンス劇場」の主題歌。

告白〔映画〕

1970年製作のフランス・イタリア合作映画。原題《L'aveu》。監督:コスタ=ガブラス、出演:イブ・モンタン、シモーヌ・シニョレほか。

告白〔曲名:平井堅〕

日本のポピュラー音楽。歌はシンガーソングライター、平井堅。2012年発売。テレビ朝日系で放送のドラマ「Wの悲劇」の主題歌。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「告白」の意味・わかりやすい解説

告白
こくはく
Les Confessions

フランスの作家,思想家 J.-J.ルソーの自叙伝。2部 12巻。 1765~70年執筆,没後 81年 (1部) と 88年 (2部) に刊行。生誕からパリに出るまでを扱う明るい第1部とスイスを出てイギリスに逃れるまでの病的で暗い第2部とから成る本書は,自伝であると同時に自己弁護の書でもある。内包する雑多な異質の要素によって,ロマン主義の自己表現に決定的な影響を与えるとともに,近代のリアリズム小説,さらには心理小説にも大きな影響を及ぼした。

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旺文社世界史事典 三訂版 「告白」の解説

告白
こくはく

①カトリック教会の秘跡の1つ(confession)
②アウグスティヌスの著作
③ルソーの自伝
信者が洗礼後犯した罪を司教に述べて許しと恩恵を願うこと。
青年期の放縦な生活から,マニ教をへてキリスト教にはいるまでの自伝。
1760年代後半の作。2部に分かれ,各6巻よりなる。刊行は死後で,第1部1781年,第2部1788年。赤裸々な告白を行い,近代文学の先駆となった。

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百科事典マイペディア 「告白」の意味・わかりやすい解説

告白【こくはく】

アウグスティヌスの著作。原題《Confessiones》で,《告白録》《懺悔録》《賛美録》とも訳される。397年から400年にかけて執筆,全13巻。1〜9巻は自伝,10巻以降は神認識を主題とし,有名な時間論を含む。

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世界大百科事典(旧版)内の告白の言及

【懺悔】より

…すなわち阿弥陀仏に懺悔して福利を求める〈阿弥陀悔過(あみだけか)〉,薬師如来を本尊として懺悔する〈薬師悔過〉などがそれである。 キリスト教においては,告白,告解などが懺悔の意味に用いられている。〈告白〉は一般に自己の信仰を表明することによって過去の生き方を悔い改めることであり,〈告解〉はとくにカトリックの用語で,洗礼後に犯した罪を聴罪司祭に告白して許しを受けることである。…

【アウグスティヌス】より


[生涯]
 北アフリカのヌミディア州タガステに,異教徒の父パトリキウスPatriciusとキリスト教徒の母モニカMonicaとの子として生まれた。46歳のときに書いた自伝《告白》によれば,16歳のときカルタゴに出て修辞学を中心とする自由学科を学んだが,ある女性と同棲して1子アデオダトゥスを生んだ。さらにマニ教の世界理解に興味を覚えて入信した。…

【自伝】より

…英語のautobiographyが,現在各国で通用する呼び名の原語とほぼいえるようで,これは19世紀初頭にようやく使われ出した。しかし,5世紀の神学者,アウグスティヌスの《告白》は,その切実な内面性と描写力によって卓抜な宗教的自伝であり,1世紀のユダヤの軍人ヨセフスの《自伝》もまた,みずからにふりかかった汚名をそそぐことを目ざした自己弁護型の自伝の先駆にほかならない。さらに古く,中国の司馬遷の〈太史公自序〉があり,また古代の碑文,遺言などの中に自伝の発端を探り出すことも十分に可能だろう。…

【ラテン文学】より

…313年のキリスト教公認を境に,4世紀から5世紀にかけて,《マタイによる福音書》を叙事詩にしたユウェンクスJuvencus,雄弁家ラクタンティウス,賛美歌作者で人文主義に反対した神秘主義者アンブロシウス,古代最大のキリスト教ラテン詩人プルデンティウスとその後継者ノラのパウリヌスなどが活躍したが,古代最大の2人のキリスト教作家も続いて現れた。一人は,全古典作家に精通した人文主義者である一方,聖書をラテン語に翻訳して,異教の伝統とキリスト教とを照応させたヒエロニムス,もう一人はヨーロッパ最初の自叙伝《告白》と,《神の国》などの著作で名高いアウグスティヌスである。こうみてくると,一部にアンブロシウスのような反人文主義の主張があったとはいえ,全体としてはキリスト教作家たちは古典を尊重し,これを習得研究してキリスト教思想と融合させようとしている。…

※「告白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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