ビヤボン(読み)びやぼん

改訂新版 世界大百科事典 「ビヤボン」の意味・わかりやすい解説

ビヤボン (びやぼん)

丸い輪に二またになった2本の足がついた簪(かんざし)型の鉄製玩具。10cm足らずの笛玩具の一種で,江戸時代に流行した。二またの足の一方に付いている爪を少しずつ手ではじくと〈ビヤボン〉と鳴るのでこの名がついた。琵琶笛とも呼んだ。1830年(天保1)刊の《嬉遊笑覧》に〈此笛を江戸の子供もてあそびたり。鳴す音のびやぼんと聞ゆるから,びやぼんと称へたり〉とあり,その流行ぶりを伝えている。子どものおもちゃのほか,上製品がおとなの間でも愛好,珍重された。文政年間(1818-30),時の老中水野出羽守忠成の幕政の腐敗ぶりを諷した落首に〈びやぼんを吹けば出羽どんどんと金がものいふ今の世の中〉というのまで登場した。流行のあまり風俗のためよろしからずと,この玩具遊びが禁止されたことがある。山崎美成の《海録》によれば,江戸のほか津軽(青森)にも口琵琶というものがあり,九州薩摩(鹿児島)にもこれに類したものがあった。明治中期ころまで残存した。
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世界大百科事典(旧版)内のビヤボンの言及

【ムックリ】より

…曲目は《エタシペ・ハウェ(海馬(とど)の鳴声)》《コイ・フム(波の音)》など,自然の音響をまねたものが多い。竹製が本来のものであるが,樺太(サハリン)では,江戸時代に本土でも流行した〈ビヤボン〉と称する馬蹄形の鉄製口琴も用いられていた。【谷本 一之】。…

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