ヘナタリガイ(読み)へなたりがい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヘナタリガイ」の意味・わかりやすい解説

ヘナタリガイ
へなたりがい / 香螺
mud creeper
[学] Cerithideopsilla cingulata

軟体動物門腹足綱ウミニナ科の巻き貝。北海道を除く日本各地から西太平洋一帯に分布し、内湾や河口の泥底干潟に大量にすむ。殻高25ミリメートル、殻径12ミリメートルぐらいに達し細長い。螺層(らそう)は12階ぐらいあるが、殻頂部は腐食されて欠損していることが多い。各螺層に3、4本の螺肋(らろく)があり、これが浅い縦溝と交わって低いいぼ状になっている。殻は黄白色で、肋の間は黒褐色。体層は上方の螺層よりすこし大きく、左側は角張って張り出す。また殻口外唇はやや厚くなり、後溝は体層の半分ぐらいまで持ち上がり、底唇はやや翼状に張り出す。水管溝は背方へ深く湾入し、短い半管状となる。蓋(ふた)は円形の多旋形で、核は中央にある。ヘナタリガイの名は、本種やアカニシなどの蓋が甲香(へなたり)とよばれ、粉末にして練香(ねりこう)の材料として使われたことによると思われる。

[奥谷喬司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のヘナタリガイの言及

【貝】より

…《徒然草》34段には〈甲香はほら貝のやうなるが,小さくて口のほどの細長にしていでたる貝のふたなり。武蔵の国金沢といふ浦にありしを所の者はへなたりと申し侍るとぞ言ひし〉とあって,ヘナタリガイのふたを香の材料としたのがわかる。貝の美しさ,形に魅せられて,《万葉集》以来,多くの詩歌に貝が詠みこまれている。…

※「ヘナタリガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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