マルチバーシティ

大学事典 「マルチバーシティ」の解説

マルチバーシティ

カリフォルニア大学第12代総長クラーク・カー,C.(Clark Kerr,1911-2003)造語。多数や多様性を意味するmultiと,universityから単一を含意するuni(unum[羅])を削った部分とを合成して造られた。中世大学以来の教師と学生とからなる単一の集団組織,およびその目的や機能をもつ大学は,もはや過去のものとなったことを強調した学術用語である。いまや簡便な辞書にも掲載され,マンモス大学などの訳がある。1963年に刊行されたカーの『大学の効用』の第1章のタイトルは,「The Idea of a Multiversity」であった。伝統的な大学観であるカーディナル・ニューマン(Cardinal Newman,1801-90)やA. フレックスナー(Abraham Flexner,1866-1959)などの大学論を批判しつつ,カー自身が率いてきたカリフォルニア大学のような多様かつ複雑で,「矛盾だらけの組織」を理解するために必要な新しい大学観を提示した。
著者: 羽田積男

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報