日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ刑事警察機構」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパ刑事警察機構
よーろっぱけいじけいさつきこう
European Police Office
EU(ヨーロッパ連合)域内の重大な国際犯罪の捜査をEU諸国が協力して実効的に進めるために、EU各国の警察間の協力を支援し、また犯罪情報の収集拠点(ハブ)となって各国警察間の情報共有を促進するために置かれた専門機関。ユーロポール(Europol)ともよばれる。所在地はオランダのハーグ。当初は、1999年にEU諸国間のユーロポール設立条約により設置された。しかし国際条約は改正が迅速にできず柔軟な組織再編の障害となるため、アムステルダム条約以降、EU立法によって設置される機構となり、2010年に全面的にEUの専門行政機関となった。
テロ活動、違法薬物密輸、人身売買、サイバー犯罪、資金浄化、ユーロ通貨偽造等の犯罪を主たる対象とし、各国警察の捜査を下支えする犯罪分析を中心に活動する。ユーロポール自体には捜査権限はない。EU内の国際犯罪情報の集積拠点であり国際犯罪分析の拠点である。機構長を頂点にピラミッド構造の指揮命令系統により組織された1000人を超える職員、約100名の犯罪分析官を擁し(2018年時点)、そのほかEU各国の連携職員200名がユーロポールとの情報共有の拠点をなす。年4万件を超える国際犯罪捜査支援を手がけている。
[中村民雄 2018年6月19日]