アムステルダム条約(読み)アムステルダムジョウヤク

デジタル大辞泉 「アムステルダム条約」の意味・読み・例文・類語

アムステルダム‐じょうやく〔‐デウヤク〕【アムステルダム条約】

EU欧州連合)の基本条約。マーストリヒト条約をさらに進め、加盟各国のアイデンティティーを尊重しながら、政治的・経済的・社会的により密接に統合された単一欧州の実現を目指すもの。1999年5月発効。
[補説]正式名称は、Treaty of Amsterdam amending the Treaty on European Union, the Treaties establishing the European Communities and certain related Acts

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百科事典マイペディア 「アムステルダム条約」の意味・わかりやすい解説

アムステルダム条約【アムステルダムじょうやく】

EU(ヨーロッパ連合)加盟15ヵ国の首脳が1997年6月,オランダアムステルダム首脳会議で合意した新ヨーロッパ連合条約のこと。1999年5月に発効した。EU設立やヨーロッパ単一通貨導入の道筋を定めたマーストリヒト条約やその前身ローマ条約などを一括して見直したもので,EUの〈新憲法〉といえる。 新条約では,(1)安保政策の面でこれまでの全会一致方式から特定国の棄権が全体の採決を妨げないように〈建設的棄権制〉(首脳会議の決定は棄権によって妨げられない,ただし棄権が3分の1を超えた場合には決定は行えない)を導入した。(2)多段階統合の概念を確認し,意欲のある3国だけで特定分野の統合を推し進める〈柔軟性原理〉を打ち出した。(3)ヨーロッパ通貨統合については,財政赤字の対GDP(国内総生産)比を3%以内に収めるとする〈財政安定協定〉に合意する一方,〈成長と雇用に関する決議〉を採択し,社会環境の変化にも応じることができる内容とした。その後,EUの中東欧への拡大に備えて,2001年ニース条約が調印され,EUの主要条約の規定は大幅に改定されることになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アムステルダム条約」の意味・わかりやすい解説

アムステルダム条約
あむすてるだむじょうやく
Treaty of Amsterdam

1999年5月1日に発効したEU(ヨーロッパ連合)の新しい憲法。通貨統合を定めたマーストリヒト条約(1993年発効)の改定版で、すでに実現した通貨統合に続く目標として、共通外交・安全保障政策の実現を打ち出しているのが最大の特徴である。とくに、(1)これまでは理事会の全会一致が原則となっていた共通外交・安保政策の意思決定について、賛成国だけが実施義務を負い、棄権国は義務を免除される「建設的棄権制」を導入したことで、棄権国を除いて共通政策を展開できるようになった、(2)特定分野で加盟国の過半数が参加し、統合を強化できる多段階統合制を導入する、などが主な改正点である。

[長澤孝昭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アムステルダム条約」の意味・わかりやすい解説

アムステルダム条約
アムステルダムじょうやく
Amsterdam Treaty

1997年6月,オランダのアムステルダムで開かれたヨーロッパ連合 EU首脳会議で採択された,EUに関する新しい条約。新ヨーロッパ連合条約ともいう。 10月2日に調印され,加盟 15ヵ国の批准をもって発効する。 EUの設立を決めたマーストリヒト条約に基づき,政治統合の一層の推進をはかるために 1996年3月から政府間協議が開始され,その結果,アムステルダム条約が調印された。加盟国間の統合への対応が異なることを受け,これまでの外交・安全保障政策での全会一致方式に代え,加盟国の「建設的棄権」を認めて多数決による行動決定ができることとし,また加盟国の過半数だけが他の加盟国にさきがけて特定の分野で統合を進めることのできる「多段階統合」の考えを導入した。このほか,東欧圏の新規加入など EU拡大を前提とした機構改革の方針,EU圏内の移動の自由,雇用を最優先課題とすることなどが決められた。

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世界大百科事典(旧版)内のアムステルダム条約の言及

【シェンゲン協定】より

…協定はその発効に手間取り,95年3月26日に原調印国のうちフランスを除いた5ヵ国で発効し,その後97年10月までに10ヵ国で適用されている。 97年10月2日に調印されたアムステルダム条約は,労働党政権となったイギリスが反対を撤回したため,ヨーロッパ連合条約(マーストリヒト条約)のなかにシェンゲン協定および補足協定の議定書として組み入れることを決定した。ただし,イギリスとアイルランドには適用除外を認め,両国は出入国管理体制を維持することになる。…

【マーストリヒト条約】より

…第3の柱として,司法・内務分野での協力(CJHA)が強化され,査証・移住・難民政策,ヨーロッパ刑事機構の設立と犯罪捜査や司法協力も行われることになった(〈シェンゲン協定〉の項目参照)。
[アムステルダム条約へ]
 条約は,デンマークの国民投票でいったんは批准を拒否されたが,予定より10ヵ月遅れて1993年11月1日発効した。マーストリヒト条約は,ヨーロッパ統合の最終的な姿を描くものではなく,〈単一ヨーロッパ議定書〉と並んで,もうひとつの一里塚である。…

【ヨーロッパ議会】より

…第5に,ヨーロッパ委員会委員長候補者およびヨーロッパ委員会全体に対する信任投票ができることになった。 97年10月2日に調印されたアムステルダム条約は,今後加盟国が増加しても,ヨーロッパ議会の定員を700議席とすることを決めるとともに,ヨーロッパ議会の権限をさらに強化した。〈協力手続〉を実質的に廃止して簡素化するとともに,〈同意手続〉と〈共同決定手続〉の適用範囲を大幅に増やした。…

【ヨーロッパ連合】より

…制度的には,EC理事会とヨーロッパ政治協力外相会議はヨーロッパ理事会に統一され,EC委員会も名称がヨーロッパ委員会に変更された。 さらにEUでは3度目の条約改正作業が行われ,その成果は1997年10月2日に調印されたアムステルダム条約となった。同条約が発効すると,第3の柱の司法・内務協力のうち,刑事警察関連の分野を残して,他の分野は〈共同体化〉される。…

※「アムステルダム条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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