一次変換(読み)いちじへんかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「一次変換」の意味・わかりやすい解説

一次変換
いちじへんかん

行列を与えたとき、それによって定まる空間から空間への写像のこと。A=(aij)をm行n列の行列とする。n次元空間En内の点P(x1,……,xn)に対して

によって点P′(x1′,……,xm′)が定まる。点P′はm次元空間Emの点である。m行n列の行列Aに対して、このようにして定まるEnからEm内への写像を、Aで定まる一次変換という。たとえば、

のとき、空間の点P(x1,x2,x3)に対して(*)を成分ごとに書くと次のようになる。


空間の点(x1,x2,x3)に、この式によって、空間の点(x1′,x2′,x3′)が定まる。

 一次変換は、直線を直線または点に、平面を平面か直線か点に写像する、という性質をもっている。またn次元ベクトル
  x=(x1,……,xn)
に対して、(*)で定まるm次元ベクトル
  x′=(x1,……,xm)
を対応させる。この写像をn次元ベクトル空間Vnからm次元ベクトル空間Vmへの一次変換という。この写像fは、ベクトルの演算について次の性質をもつ。

  f(k1x1+k2x2)=k1f(x1)+k2f(x2)
これを一次変換fの線形性という。

[寺田文行]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例