直線は引っ張られた糸や光線からの抽象として得られた概念で,字義どおりまっすぐな線のことであるが,数学で直線というときは両側に限りなく延びていることを要請し,有限なものを線分,一方の側だけに限りなく延びたものを半直線と呼んで区別している。ユークリッドは〈直線はその上の点に対して一様に横たわる線である〉といって直線の説明をしているが,直線のような原始概念を定義できるはずもないので,現今の数学ではD.ヒルベルトに従って直線は無定義な数学的対象物とし,それの数学的に表現できる性質を公理として与え,これを直線の根拠にしている。なお,解析的には,定数a,b,c,l,m,n(l2+m2+n2≠0)を用いて,
x=a+lt,y=b+mt,z=c+nt (tは実数)
の形に表される(x,y,z)を座標にもつ点の集合が直線であるということができる(図)。
執筆者:中岡 稔
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糸をぴんと引っ張ってできるようなまっすぐな線が直線である。といっても、直線そのものを定義することはできない。異なる2点で一つの直線が定まる、あるいは、二つの平面の交線である、などというように他の図形との相互関係によって直線が規定される。「線には長さはあるが幅も厚みもない」。また、「線が動いて面となる」など一見矛盾した説明もなされるが、幾何を公理的に構成するときは、点と直線と平面とは、いわゆる無定義述語であり、それらの相互関係が公理として述べられる。図形の性質を考えていくときは、定木(じょうぎ)に従って線を引いて、理想化された直線の表現として考えていく。異なる2点でただ一つの直線が定まる。直線上の1点によって直線は二つの部分に分けられ、それぞれを、その点を端点とする半直線という。直線上の異なる2点をとるとき、2点の間にある直線の部分をその2点を端点とする線分という。平面上の2点でできる直線上の点はすべてその平面上にある。平面はその直線によって二つの部分に分けられ、それぞれをその直線を境界線とする半平面という。同じ半平面上の2点を結ぶ線分は境界線と共有点はなく、異なる半平面上それぞれに点をとって結ぶと、境界線とかならず共有点がある。平面上の二直線については、共有点がないか(平行)、共有点がただ一つか(交わる)、あるいは完全に一致してしまう。空間の二直線が同一平面上にないとき、ねじれの位置にあるという。
[柴田敏男]
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… 図形としては,次のようなものが用いられる。点(それ以上凝縮しえない究極的相を示す),直線(成長・展開の相を示す),円(〈全体〉を表す),四角形(自然の質料を表す),三角形(サーンキヤ学派の説く純質・激質・暗質という自然の三つの性質などを示し,下向きのものは女性原理を,上向きのものは男性原理を表す),下向きと上向きの二つの三角形が交わってできる六芒星の形(六角の星形で,現象世界を顕現させる力を表す),五芒星(地・水・火・風・空の〈五大〉などを表す)などである。そのほかに〈門〉を表す形(聖域に入る入口を示す),蓮の花弁の形(神格の属性としての願望を成就させる力などを表す)なども用いられる。…
※「直線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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