日本大百科全書(ニッポニカ) 「不開門」の意味・わかりやすい解説
不開門
あかずのもん
平安京大内裏(だいだいり)外部門の一つで、一条大通りに通じる北面中央の偉鑒門(いかんもん)の異称。不明門とも書く。「偉鑒門」は、丹波(たんば)国の猪飼(いかい)氏の造建(794)により、音(おん)を通わせ、中国風の文字をあてたもの。986年(寛和2)花山(かざん)天皇が藤原氏の内紛のため出家され東山元慶寺(がんぎょうじ)に入御の際、ひそかにこの門を出て以来閉め切られたため、不開門とよばれた。また、名古屋城本丸から御深井丸(おふけいまる)の東へ抜ける大奥間道の秘門のように、城門のなかであまり目だたない所に置かれ、籠城(ろうじょう)戦のときや忌み事のときのみ使用された門をいう。熊本城では、本城の北東の位置に創建時のまま現存し、国の重要文化財に指定されている。さらに一般化し、特別の場合にのみ開いて使用する門の意味にも用いる。
[稲垣史生]