中国の高速鉄道(読み)ちゅうごくのこうそくてつどう(英語表記)CRH//China Railway High-speed

共同通信ニュース用語解説 「中国の高速鉄道」の解説

中国の高速鉄道

中国日本ドイツ技術を導入しながら高速鉄道を整備した。既に先進国の技術を吸収し、自主開発先端技術を持つようになったと主張している。国内の路線網を急速に拡大し、営業距離は約1万6千キロと「世界の高速鉄道の60%以上に相当する」(中国政府)という。2011年7月の浙江省温州市での追突事故をきっかけに、安全性を懸念する声が高まった。(北京共同)

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知恵蔵 「中国の高速鉄道」の解説

中国の高速鉄道

外国からの技術移転によって生産された数種類のCRHシリーズの高速鉄道車両、もしくはこれらが運行される鉄道路線のこと。これによって従来の中国国内の鉄道路線の所要時間を半減させる高速化が図られた。高速鉄道新線の営業運転での最高速度は時速350キロメートルに及び、安全性、経済性の観点から現在は時速300キロメートルで運行している。この他、高速鉄道としてはリニアモーターカーによって上海市内と上海浦東国際空港を結ぶ、上海トランスラピッドも含めて扱われる場合もある。
中華人民共和国の経済発展に伴って鉄道の高速化が焦眉(しょうび)の急とされ、1990年代初頭には北京・上海を結ぶ高速鉄道の建設が求められるようになった。在来線の輸送能力向上のため、ルートの改良などにより97年以降何度かのダイヤ改正が実施され、速度の改善(時速160キロ程度)が進められた。2007年のダイヤ改正からはCRHシリーズの鉄道車両(通称和諧(わかい)号」)が導入された。「和諧」とは「調和」の意で、胡錦濤(フー・チンタオ)政権が04年から主張する「和諧社会(調和ある社会)」、「和諧発展(調和ある発展)」などのスローガンにちなむ。それまでの鄧小平(トン・シアオピン)の経済の高度成長を重視した改革開放の行きすぎを反省し、持続可能な発展を目指すというものである。また、2007年秋に始まった世界金融危機に伴い、内需拡大のための公共投資・内需拡大政策が進められたことによって、高速鉄道の建設ペースはより早められた。
和諧号に使用されるのは、CRH(China Railway High-speed)シリーズと呼ばれる車両。中国の鉄道は、一般に機関車のみを動力車とする動力集中方式であるのに対し、CRHは動力を複数の車両の床下に分散配置する電車方式をとる。CRHは外国からの技術移転により主に中国で生産され、CRH1はカナダのボンバルディア社、CRH2は日本の川崎重工業、CRH3はドイツのシーメンス社、CRH5はフランスのアルストム社の協力による。なお、CRH2は日本の新幹線「はやて」、「あさま」などとして活躍するE2系電車をベースにしたものである。
CRH380Aは11年6月30日から運行を始めた北京-上海間の高速鉄道の主力車両であり、CRH2を発展させて設計されたが、中国当局は独自に開発したものとし諸外国への売り込みを念頭に米国で技術特許を申請すると発表したため物議を醸していた。
なお、11年7月23日には、浙江省温州市の高架橋で落雷により停車中のCRH1系列車に後続のCRH2系列車が追突し、6両が脱線、うち2両が橋梁(きょうりょう)より落下して多数の死傷者を出す重大事故が発生した。事故原因を巡って運行管理面の欠陥が指摘されるほか、当局による事故隠しのような対応に批判が高まっている。

(金谷俊秀  ライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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