中立政策の見直し(読み)ちゅうりつせいさくのみなおし

知恵蔵 「中立政策の見直し」の解説

中立政策の見直し

従来中立の立場であったスイスオーストリア北欧諸国が中立を再考している情勢。永世中立国であるスイスやオーストリアでは、中立政策を見直し、EUNATOへの加盟が模索され始めている。スイスでは、1992年12月、EUへの加盟交渉開始をめぐり国民投票が実施されたが、早期加盟推進派が敗北した。しかし、国連平和維持活動へのスイスからの派兵に関しては、2001年6月の国民投票で僅差で承認された。オーストリアでも、00年2月に発足した右派連合政権が、01年1月に「国家安全保障ドクトリン」を提唱し、永世中立政策を放棄しNATOへの加盟に向けて歩み出した。しかし、04年4月の大統領選挙では永世中立政策の堅持を唱える社会民主党のフィッシャーが当選し、加盟推進は停止状態である。一方、北欧ではスウェーデン与党・社会民主労働党が、01年末の党大会で中立政策を放棄することを決定した。この方向転換の背景には、EU緊急対応部隊などEU独自の軍事力への兵力提供など、スウェーデンがEUの共通外交政策と共同歩調をとったことにある。北欧諸国外相会議もスウェーデン与党の決定を歓迎し、北欧のなかでスウェーデン以外唯一の非同盟国フィンランドもスウェーデンに続く見込みで、近い将来、北欧のすべての国がNATOに加盟することになりそうである。スウェーデン政府はNATOと軍事演習や領空警戒の協力強化について既に合意している。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む