決定(読み)ケッテイ

デジタル大辞泉 「決定」の意味・読み・例文・類語

けっ‐てい【決定】

[名](スル)
物事をはっきりと決めること。物事がはっきりと決まること。また、その内容。「会議の日取り決定する」「決定権」
裁判所が行う判決以外の裁判。口頭弁論を経ない点で判決と異なり、個々の裁判官がなす命令と区別される。「公訴棄却決定
[類語](1決まり本決まり確定不定不確定不特定既定内定所定暫定予定画定(評議による決定)議決決議論決評決議定取り決め(ある事柄について下す決定)だん断案けつ裁決裁定決断判断断定

けつ‐じょう〔‐ヂヤウ〕【決定】

[名](スル) あることが定まって動かないこと。また、信じて疑わないこと。「決定心」
「一旦生きんと―したる上は」〈露伴・いさなとり〉
[副]疑いなく。きっと。必ず。
御方みかた―打ち負け候ひぬと覚え候ふなれば」〈太平記・一六〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「決定」の意味・読み・例文・類語

けっ‐てい【決定】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) はっきりときめること。また、はっきりきまること。
    1. [初出の実例]「矣の字のごとき先輩多く決定(ケッテイ)したる所にある字とし」(出典:授業編(1783)六)
    2. [その他の文献]〔史記‐亀策伝〕
  3. 特に申告納税制度をとる国税において、納税義務者からの申告がない場合、税務署長がその調査したところによって課税すること。
  4. 裁判所が行なう判決以外の裁判。判決の場合よりも比較的軽い事項について行なわれる。口頭弁論が義務づけられない点で判決と異なり、裁判官が複数で行なう点で命令と異なる。〔民事訴訟法(明治二三年)(1890)〕

けつ‐じょう‥ヂャウ【決定】

  1. [ 1 ] ( 「じょう」は「定」の呉音 ) きまること。あることが定まって動かないこと。また、信じて疑わないこと。
    1. [初出の実例]「此あふぎ、つかまつりおうせん事はふぢゃう、いそんぜん事はけつ定に候」(出典:中院本平家(13C前)一一)
    2. [その他の文献]〔無量寿経‐上〕
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 きっと。かならず。
    1. [初出の実例]「御方決定(ケツじゃう)打ち負け候ぬと覚え候なれば」(出典:太平記(14C後)一六)
    2. [その他の文献]〔唐無名氏‐輓歌〕

けち‐じょう‥ヂャウ【決定】

  1. 〘 名詞 〙けつじょう(決定)
    1. [初出の実例]「つねに慈悲を行じ、みづから、ほとけにならんこと、決定(クチチャウ)して」(出典:妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)三)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「決定」の意味・わかりやすい解説

決定(法律用語)
けってい

裁判の種類を表わす法律用語。民事訴訟法上、裁判の一種であって、裁判所の裁判である点で、裁判長、受命裁判官あるいは受託裁判官の裁判たる「命令」から区別され、口頭弁論を経なくてもよい点で「判決」から区別される。決定は告知により効力を生じ、これに対する不服申立ては原則として抗告による。決定には、その性質に反しない限り判決に関する規定が準用される。裁判所は、自己のなした決定に拘束される(覊束力(きそくりょく))のが原則であるが、訴訟指揮の決定には覊束力がなく、裁判所はいつでもこれを取消変更し、抗告の場合には再度の考案(決定をした裁判所が考え直すこと)により更正できる。

 決定は、訴訟指揮、訴訟手続に付随しまたはこれから派生する事項、強制執行に関する事項の判断について行われる。たとえば、証拠決定、移送決定、時機に後れた攻撃防御方法の却下決定などである。なお、差押え命令、仮差押え命令、仮処分命令などは、その名称にもかかわらず、裁判の形式からすれば決定であって命令ではない。判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるとき決定手続で訂正する道がある(更正決定。民事訴訟法257条1項)。

 刑事訴訟法上もほぼ同様であるが、公訴棄却の決定(刑事訴訟法339条)、控訴または上告棄却の決定(同法385条以下・414条)のように終局的裁判としても決定が用いられる。なお、高等裁判所の決定に対しては抗告ではなく異議が認められる。

[本間義信]


決定(生物学用語)
けってい

生物学用語。胚(はい)発生の過程で、胚のある細胞集団(原基)が特定の器官あるいは組織などに分化するよう方向づけられること。最近では広く、ある細胞または細胞群が特定の形質をもつよう方向づけられることをさすのにも使われる。多くの胚で、各部の細胞群は胚内でのそれぞれの位置にふさわしい分化(即所的分化)をするよう決定されることで調和のとれた個体が生ずる。いったん決定を受けた細胞群は、周囲の条件とはかかわりなく分化(即自的分化)する。したがって決定の時期以後である部分の欠損や、細胞群の位置の変化がある場合、調整はおこらず奇形が生ずる。細胞の運命の決定の時期、その仕組みなどの理解は発生学のみならず、癌(がん)発生の仕組みの解明ほか医学、農学にも深くかかわっている問題である。

[竹内重夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「決定」の意味・わかりやすい解説

決定 (けってい)

法律用語。(1)民事訴訟では,判決よりも簡易・迅速な裁判のことをいい,判決に比して軽易な事項や特別の考慮から口頭弁論が必要とされていない場合に,裁判所が下すもの。命令も簡易・迅速な裁判だが,個々の裁判官の資格でなされる点で,裁判所が行う決定と異なる。なお,支払命令,差押命令,転付命令,仮差押・仮処分命令等のように,法文上は命令の語を用いているが,その法律上の性質は決定であるものがあるので注意を要する(ただし,仮差押・仮処分命令の場合は例外的には判決のこともある)。決定は,具体的には,訴訟指揮に関する事項,忌避や除斥等の迅速処理を要する事項,民事執行手続,非訟事件等について用いられる。裁判所は決定の前に口頭弁論を開くか否かは自由であり(民事訴訟法87条1項但書),裁判所が適当と認める方法で当事者に告知すればよく,公開の法廷で言い渡す必要はないし(119条),告知と同時に効力を生ずる。決定に対する不服申立は常にできるわけではなく,できる場合でも抗告というかなり簡略な方法しか認められていない(328条以下)。また,ある裁判をした裁判所がその裁判を変更できないという拘束力(自縛性)は判決よりも弱く,訴訟指揮に関する決定はいつでも取り消すことができるし,抗告がなされた場合,決定をなした原裁判所はその決定を更正することもできる(再度の考案)。

(2)刑事訴訟でも意義はほぼ同様であるが,公訴棄却の決定(刑事訴訟法339条)等のように訴訟を終わらせる終局的裁判として用いられることもある。申立てにより公判廷でするとき,または公判廷における申立てによりするときは,訴訟関係人の陳述を聴かなければならない。原則として理由を付さなければならないが,抗告が許されない決定についてはその必要はない(44条)。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「決定」の意味・わかりやすい解説

決定(法律)【けってい】

法律上,広く国や地方公共団体の機関が,その裁量に属する事項等について一定の内容のものに決める処分をすることを指す。訴訟法上は,裁判所がする判決以外の裁判をいう。訴訟中に生じた軽微な付随的事項や特に迅速を要する事項などについて行われるが,判決と異なって,原則として口頭弁論を経なくてもよく,また必ずしも言渡しまたは宣言がなくても成立する。決定に対する通常の不服申立て方法は抗告である。行政法上は,異議申立てに対する行政庁の判断の表示を指す。→命令
→関連項目許可抗告裁判三審制度上訴特別抗告非訟事件民事保全法令状

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「決定」の意味・わかりやすい解説

決定
けってい
ruling; order; Beschluß

判決および命令とともに裁判所のする裁判の一種。 (1) 民事訴訟上,判決は,訴訟についての終局的または中間的判断の形式として用いられるが,決定および命令は,訴訟指揮ないし付随的な事項の処分,あるいは強制執行に関する事項の裁判の形式として用いられる。手続的な面においても,判決をするにあたっては,必ず口頭弁論を経なければならないのに対し,決定および命令については,口頭弁論を開くかどうかは任意的である (民事訴訟法) 。また,その告知も相当と認める方法ですれば足り,裁判書をつくらず調書の記載で代用できる。 (2) 刑事訴訟上の決定もほぼ同じである。ただし,公判廷での申し立てなどの場合以外は関係人の陳述を聞く必要はなく,抗告の認められない決定については理由を付する必要もない。もっとも刑事訴訟法上の決定は公訴,控訴,上告の棄却についても用いられる (刑事訴訟法) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

普及版 字通 「決定」の読み・字形・画数・意味

【決定】けつてい

定める。〔史記、殷紀〕武丁~殷を復興せんことを思ふも、未だ其の佐を得ず。三年言(ものい)はず、事は冢宰に決定し、以て國風をる。

字通「決」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

知恵蔵 「決定」の解説

決定

更正」のページをご覧ください。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

会計用語キーワード辞典 「決定」の解説

決定

納税者が、申告する義務があるにもかかわらずそれをなさなかった場合に税務署が調査により税額を決めることをいいます。この場合、決定通知書が税務署から送付されます。また、本税に加えて無申告加算税という加算税が徴収されます。

出典 (株)シクミカ:運営「会計用語キーワード辞典」会計用語キーワード辞典について 情報

産学連携キーワード辞典 「決定」の解説

決定

「決定」とは、申立人が審理に参加できない、特許異議申し立てなどにおける審理の結論のことを指す。

出典 (株)アヴィス産学連携キーワード辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の決定の言及

【原基】より

…生物個体の発生過程で,特定の器官に発生するように運命(決定)づけられた胚の部域(胚域)。両生類をはじめ一般に動物の胚の各胚域は発生の初期ほど,それが将来どんな器官を作りうるかという形成可能性の幅が広く,いわゆる未決定の状態にある。…

【更正・決定】より

申告納税制度の下においては,納付すべき税額は,納税申告によって確定することが原則とされるが,申告義務が適正に履行されない場合には,行政庁(税務署長)が補充的に確定する権限を行使しなければならない。このような補充的な租税確定処分のうち,申告がなされている租税について,その納税申告書に記載された課税標準や税額等の計算が法律の規定に従っていなかったり,行政庁が調査したところと異なっているときに,申告内容を是正する処分を更正といい(国税通則法24条),申告がなされていない場合に,行政庁が調査によって課税標準,税額等を決定する処分を決定という(25条)。すでに更正または決定がなされた後に行う場合は,再更正と呼ばれるが(26条),これは更正の一形態である。…

【裁決】より

…裁決は,書面で行われ,かつ,理由を付されなければならない。行政不服審査法は,異議申立てに対する行政庁の判断を決定と呼んでいるが,上の意味での裁決に限らず,決定をも含めて,広く行政上の不服申立てに対する行政庁の判断を総称して,裁決と呼ぶこともある。(2)行政上の法律関係に関する裁定も裁決と呼ばれる。…

※「決定」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android