デジタル大辞泉 「決定」の意味・読み・例文・類語
けっ‐てい【決定】
1 物事をはっきりと決めること。物事がはっきりと決まること。また、その内容。「会議の日取りを
2 裁判所が行う判決以外の裁判。口頭弁論を経ない点で判決と異なり、個々の裁判官がなす命令と区別される。「公訴棄却の
[類語](1)決まり・本決まり・確定・不定・不確定・不特定・既定・内定・所定・暫定・予定・画定(評議による決定)議決・決議・論決・評決・議定・取り決め(ある事柄について下す決定)
裁判の種類を表わす法律用語。民事訴訟法上、裁判の一種であって、裁判所の裁判である点で、裁判長、受命裁判官あるいは受託裁判官の裁判たる「命令」から区別され、口頭弁論を経なくてもよい点で「判決」から区別される。決定は告知により効力を生じ、これに対する不服申立ては原則として抗告による。決定には、その性質に反しない限り判決に関する規定が準用される。裁判所は、自己のなした決定に拘束される(覊束力(きそくりょく))のが原則であるが、訴訟指揮の決定には覊束力がなく、裁判所はいつでもこれを取消変更し、抗告の場合には再度の考案(決定をした裁判所が考え直すこと)により更正できる。
決定は、訴訟指揮、訴訟手続に付随しまたはこれから派生する事項、強制執行に関する事項の判断について行われる。たとえば、証拠決定、移送決定、時機に後れた攻撃防御方法の却下決定などである。なお、差押え命令、仮差押え命令、仮処分命令などは、その名称にもかかわらず、裁判の形式からすれば決定であって命令ではない。判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるとき決定手続で訂正する道がある(更正決定。民事訴訟法257条1項)。
刑事訴訟法上もほぼ同様であるが、公訴棄却の決定(刑事訴訟法339条)、控訴または上告棄却の決定(同法385条以下・414条)のように終局的裁判としても決定が用いられる。なお、高等裁判所の決定に対しては抗告ではなく異議が認められる。
[本間義信]
生物学用語。胚(はい)発生の過程で、胚のある細胞集団(原基)が特定の器官あるいは組織などに分化するよう方向づけられること。最近では広く、ある細胞または細胞群が特定の形質をもつよう方向づけられることをさすのにも使われる。多くの胚で、各部の細胞群は胚内でのそれぞれの位置にふさわしい分化(即所的分化)をするよう決定されることで調和のとれた個体が生ずる。いったん決定を受けた細胞群は、周囲の条件とはかかわりなく分化(即自的分化)する。したがって決定の時期以後である部分の欠損や、細胞群の位置の変化がある場合、調整はおこらず奇形が生ずる。細胞の運命の決定の時期、その仕組みなどの理解は発生学のみならず、癌(がん)発生の仕組みの解明ほか医学、農学にも深くかかわっている問題である。
[竹内重夫]
法律用語。(1)民事訴訟では,判決よりも簡易・迅速な裁判のことをいい,判決に比して軽易な事項や特別の考慮から口頭弁論が必要とされていない場合に,裁判所が下すもの。命令も簡易・迅速な裁判だが,個々の裁判官の資格でなされる点で,裁判所が行う決定と異なる。なお,支払命令,差押命令,転付命令,仮差押・仮処分命令等のように,法文上は命令の語を用いているが,その法律上の性質は決定であるものがあるので注意を要する(ただし,仮差押・仮処分命令の場合は例外的には判決のこともある)。決定は,具体的には,訴訟指揮に関する事項,忌避や除斥等の迅速処理を要する事項,民事執行手続,非訟事件等について用いられる。裁判所は決定の前に口頭弁論を開くか否かは自由であり(民事訴訟法87条1項但書),裁判所が適当と認める方法で当事者に告知すればよく,公開の法廷で言い渡す必要はないし(119条),告知と同時に効力を生ずる。決定に対する不服申立は常にできるわけではなく,できる場合でも抗告というかなり簡略な方法しか認められていない(328条以下)。また,ある裁判をした裁判所がその裁判を変更できないという拘束力(自縛性)は判決よりも弱く,訴訟指揮に関する決定はいつでも取り消すことができるし,抗告がなされた場合,決定をなした原裁判所はその決定を更正することもできる(再度の考案)。
(2)刑事訴訟でも意義はほぼ同様であるが,公訴棄却の決定(刑事訴訟法339条)等のように訴訟を終わらせる終局的裁判として用いられることもある。申立てにより公判廷でするとき,または公判廷における申立てによりするときは,訴訟関係人の陳述を聴かなければならない。原則として理由を付さなければならないが,抗告が許されない決定についてはその必要はない(44条)。
執筆者:小林 秀之
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…生物個体の発生過程で,特定の器官に発生するように運命(決定)づけられた胚の部域(胚域)。両生類をはじめ一般に動物の胚の各胚域は発生の初期ほど,それが将来どんな器官を作りうるかという形成可能性の幅が広く,いわゆる未決定の状態にある。…
…申告納税制度の下においては,納付すべき税額は,納税申告によって確定することが原則とされるが,申告義務が適正に履行されない場合には,行政庁(税務署長)が補充的に確定する権限を行使しなければならない。このような補充的な租税確定処分のうち,申告がなされている租税について,その納税申告書に記載された課税標準や税額等の計算が法律の規定に従っていなかったり,行政庁が調査したところと異なっているときに,申告内容を是正する処分を更正といい(国税通則法24条),申告がなされていない場合に,行政庁が調査によって課税標準,税額等を決定する処分を決定という(25条)。すでに更正または決定がなされた後に行う場合は,再更正と呼ばれるが(26条),これは更正の一形態である。…
…裁決は,書面で行われ,かつ,理由を付されなければならない。行政不服審査法は,異議申立てに対する行政庁の判断を決定と呼んでいるが,上の意味での裁決に限らず,決定をも含めて,広く行政上の不服申立てに対する行政庁の判断を総称して,裁決と呼ぶこともある。(2)行政上の法律関係に関する裁定も裁決と呼ばれる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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