化学辞典 第2版 「二窒素錯体」の解説
二窒素錯体
ニチッソサクタイ
dinitrogen complex
窒素錯体ともいう.一般に,二窒素錯体とは,分子状窒素(N2)が遷移金属化合物に配位した錯体をいう.現在まで多くの遷移金属元素について分子状窒素の配位した錯体が合成単離されており,その窒素源は,ガス状窒素のほか,ヒドラジン,ナトリウムアジドなどである.たとえば,ガス状の窒素分子が直接反応してできたヒドリド(二窒素)トリストリフェニルホスフィンコバルト[CoH(N2){P(C6H5)3}3]は,コバルトアセチルアセトナートをトリフェニルホスフィンの存在下,エーテルまたはトルエン中,窒素雰囲気下にトリイソブチルアルミニウムで還元することにより,橙色の結晶として得られる.これらの窒素錯体の化学反応性について,活発な研究が行われている.また,窒素固定酵素の作用機構との関連において,生化学的見地から興味の対象となっている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報