ヒドラジン(読み)ひどらじん(英語表記)hydrazine

翻訳|hydrazine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒドラジン」の意味・わかりやすい解説

ヒドラジン
ひどらじん
hydrazine

窒素水素の化合物。アンモニアまたは尿素を次亜塩素酸塩で酸化するラーシッヒ法で製造される。

  NH3+NaOCl―→NH2Cl+NaOH
  NH2Cl+NH3+NaOH
   →N2H4+NaCl+H2O
 最終的にヒドラジン一水和物の濃水溶液として得られる。重金属イオンが存在すると収量が低下するので、キレート剤にかわなどを加える。次亜塩素酸塩のかわりに塩素とアセトンを用いるバイヤー法もある。

 無水ヒドラジンは無色、発煙性、アンモニア臭の油状液体。空気中では発煙する。強熱すると爆発する。水に易溶。弱い塩基ヒドラジニウム塩(一般式N2H5XおよびN2H6X2、Xは1価の陰性原子または基)をつくる。硫酸塩N2H6SO4は水に溶けにくい。水溶液は還元作用があり、銀塩溶液から銀を沈殿させ、鉄(Ⅲ)塩を鉄(Ⅱ)塩に変える。溶存酸素により窒素を生じる。酸化剤となることもある。

 一水和物N2H4・H2Oは無色、発煙性の液体。式量50.1。融点-51.7℃。沸点は118.5℃(水銀柱740ミリメートル)。比重1.0305(25℃)。二大用途は高圧ボイラー用水の脱酸素剤と高分子材料の発泡剤で、ついで農薬用、医薬用である。過酸化水素とともにロケット推進薬燃料として用いられる。また燃料電池などにも用いられる。きわめて有毒。

[守永健一・中原勝儼]


ヒドラジン(データノート)
ひどらじんでーたのーと

ヒドラジン
  NH2NH2
 式量  32.0
 融点  1.4℃
 沸点  113.5℃
 比重  1.011(測定温度15℃)
 屈折率 (n) 1.470

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒドラジン」の意味・わかりやすい解説

ヒドラジン
hydrazine

化学式 N2H4刺激臭のある無色の液体で融点 1.4℃,沸点 113.5℃。紫色の炎をあげて燃える。強力な還元剤として有機化学反応に用いられるほか,ロケット燃料として用いられる。強い毒性をもち,皮膚,粘膜をおかし,肝臓を害する。

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