京都議定書目標達成計画(読み)きょうとぎていしょもくひょうたっせいけいかく

知恵蔵 「京都議定書目標達成計画」の解説

京都議定書目標達成計画

日本は、2008年から13年の平均の温室効果ガス排出量を1990年に比べて、6%削減することが京都議定書で定められている。この約束を果たすため、政府は05年に達成計画を作り、産業界と国民が取り組むことを定めているが、削減の進捗(しんちょく)状況が思わしくない。05年度現在の排出量は13億6000万tで、12.8%を削減し、11億8600万tまで減らさないといけなくなる。このうち、間伐など森林整備による吸収分が3.8%、排出権取引で1.6%削減するとしているが、それでも不足分が約1.7%に上ることが政府の試算で分かった。産業界を代表する経団連は自主行動計画を作り、削減対策を進めてきたが、政府がさらに追加対策を要請。それに対し、業界ごとに削減量を積み上げた。例えば化学は削減目標を10%から20%にし、856万tを上積み、電気・電子が28%から35%にし、228万t上積み、製紙が13%から20%にし、217万tに上積みなど、18業界で計1993万t上積みすることになった。この上積み分が1.6%になるが、さらに1.1%、2000万t分が足りない。だが、この計画は、原子力発電所が順調に動いたときを想定しており、事故で長期間停止し、効率が悪くなっている現在の状況を見ると、さらに厳しい。電力業界は当初の目標に足りない分は排出権取引で購入して手当てするとしているが、それだけで数千億円かかるとされている。政府は、国民1人1日1kgの削減を求める「国民運動」に期待するが、2000万tを減らすめどはたっていない。できない場合には数千億円から1兆円の税金を投入して排出権を海外から購入することになり、政治問題化するのは必至。

(杉本裕明 朝日新聞記者 / 2008年)


京都議定書目標達成計画

2005年2月16日の京都議定書発効を受けて、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、同年4月28日に閣議決定された日本政府の地球温暖化対策のための基本的な計画。1997年12月に首相を本部長として内閣に設置された地球温暖化対策推進本部が所管する。国連気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)を受けて、98年6月に最初の地球温暖化対策大綱が決定され、京都議定書で日本が約束した温室効果ガスの90年比6%削減のうち、5.5%は排出量取引や吸収源の拡大などで賄い、残り0.5%を国内のエネルギー対策で行うことを定めた。02年3月には、京都議定書の批准をにらんで大綱を改定して、04年と07年に評価を行い、不十分なら見直す「ステップ・バイ・ステップ」のアプローチを導入した。07年の見直しでは義務履行期間を直前に控え、国内の温室効果ガス総排出量について、1990年度比8.4%増(05年度)を再出発点に、計画強化が議論された。しかし、温暖化対策税や排出量取引など実効的な温暖化防止対策は、産業界の強い反対のため見送られた。

(飯田哲也 環境エネルギー政策研究所所長 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

農林水産関係用語集 「京都議定書目標達成計画」の解説

京都議定書目標達成計画

「地球温暖化対策推進法」に基づき、京都議定書の6%削減約束を確実に達成するために必要な措置を定めたもの。我が国の森林経営による吸収量として1,300万炭素トン程度の吸収量を確保することを目標と位置付けたほか、温室効果ガスの排出源対策、森林整備等の吸収源対策、京都メカニズムの活用など、目標達成のための対策・施策などを明らかにしている。

出典 農林水産省農林水産関係用語集について 情報

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