デジタル大辞泉
「活用」の意味・読み・例文・類語
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かつ‐ようクヮツ‥ 【活用】
〘 名詞 〙 ① いかして用いること。いかしてはたらかせること。利用すること。[初出の実例]「術者。意匠を運らし類に触れて活用せば其器は乃ち至簡なりと雖も以て変に無窮に応ずべし」(出典:舎密開宗(1837‐47)内) 「金銭を貯蓄するのみを事として、これを活用する目的なき人」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一〇) ② 文法で、動詞など(日本語では、用言と助動詞)がその用法に従って組織的に語形を変化させること。また、その変化の体系。日本語の用言では、主として語尾 に変化がある。これを用法によって統一的に整理した一覧表を活用表という。変化には、動詞型、形容詞型、形容動詞型があり、助動詞には、なお特別の型をもつものがあり、語形変化をしないで他の語の活用と同様の用法をもつものもある。[初出の実例]「てにはの活用も、時世にすこしづつのかはりめ有といへども」(出典:俳諧・也哉抄(1774))
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活用 (かつよう)
目次 活用形 活用の型 語幹と語尾 変遷 日本語で,事態の叙述にあずかる語が,一定の用法に従って,体系的に語形を変化させること。語形とは音節連続の形式についていい,普通はアクセント に及ばない。英・仏語その他ヨーロッパ語のコンジュゲーションconjugationも語形の体系的変化であるが,その変化の示す意味が,人称,数,時,法,相などに関するのに対して,日本語の場合では,表に示すように,単独 に用いられる際の切れ方,続き方の差(終止,中止,命令,連体,連用等),また後に結合する付属語の種類に応じて語形が変化する。
活用形 国文法では,普通にすべての活用語を通じてこれらの変化形を6個の欄(活用形)に配当して活用を体系づける。この6個の活用形は,文語 のうち変化形の最も多い語〈死ぬ〉〈去(い)ぬ〉(な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね)について定めたもので,その変化形の五十音順 に,それぞれ代表的用法に従って,未然形 ,連用形 ,終止形 ,連体形 ,已然形(口語では仮定形 ),命令形 という。語によっては2個の活用形が同形であるものがあり,またとくに口語では,1個の活用形中にいくつかの異なった変化形を配当しなければならない場合がある。すべての活用形と用法との組合せを矛盾なく作ろうとすると,もっと多くの活用形が必要になる。
活用の型 現代の口語では,大別して動詞型,形容詞型,ダナ型,特殊型 の4種になる。動詞型には,(1)終末の音節の母音 が交替することを主とするもの(五段活用),(2)一定の音節連続の後にル・レ・ロなどを交替添加また不添加することによるもの(上・下一段活用),(3)両者の混合によるもの(カ行変格・サ行変格活用)がある。形容詞型は,イ・ク・ケレなどの交替添加による。動詞・形容詞は,それぞれ動詞型・形容詞型の活用をもつ。助動詞には,動詞型・形容詞型のほかに,ダ・デ・ナ・ニ等の交替によるダナ型と,以上の各型に入れがたい特殊型とがある。形容動詞の活用はダナ型であるが,この交替部分を指定の助動詞〈だ〉そのものの添加と見ることもできる。さらに助動詞〈だ〉の各変化形を,それぞれ1単語 (助詞)と考えることもできるが,各変化形の用法は動詞・形容詞の各変化形にほぼ一致し,各変化形を通じて意味上一貫性が認められるので,1個の活用系列中に収める。
語幹と語尾 動詞・形容詞(および形容動詞)では一般に,交替の行われる音節以下を活用語尾 ,それに先だつ部分を語幹と呼ぶが,動詞のルレ添加型では,直前の1音節(考えルの〈え〉,試みルの〈み〉)までを語尾に含める習慣である。なお,見ル・出ル・来ル等では,ルの前が1音節にとどまるが,これらは語幹・語尾の別のないものという分類をうける。語によっては,その活用語尾にあたる部分を含めて他の語幹となっているもの(重ねル-重なル,驚く-驚かス,喜ぶ-喜ばシイ),2語が語幹を等しく活用語尾の性質を異にするもの(流す-流れル,立つ-立てル,高めル-高イ)などがある。これらの対立は多くの場合,品詞や自他等の形式的意味の差を示すことになる。ただし,動詞の中では,ある活用形がつねに一定の形式的意味をもつとは簡単にはいえない。
変遷 文語では,中古語を基準とし,その活用の型は,細分において現代口語よりも多い。これらの間に併合が行われて,ほぼ現代語のようになったのは室町時代末以来のことである。上代はほぼ中古に等しいが,原始日本語における動詞活用の起源には,一元説と二元説がある。活用形について現代口語と文語ないし中古語との差異は,中古終止形の用法がすたれて連体形が終止法 をもち(ダナ型を除き終止連体形が同一となる),未然・已然の用法上の対立が解かれ,連用形の音便が本来の連用形と用法を分けあい,未然形が助動詞〈む〉と結合して音転化をきたした,などである。ダナ型の活用語尾は室町時代末に形づくられたが,中古語でこれに当たるものは,助詞〈に〉に動詞型の一種の〈あり〉が結合したものである。原始語の動詞の活用形については,2個の原形から発展したとの推定がある。また中古以前では,終止形と連体形はアクセントでも区別されたらしい。形容詞の活用は,発達が動詞とやや異なるらしく,上代と中古との差は動詞の場合より著しい。なお,日本人自身が活用について観察したのは,中世以降のことで,近世末にいたって活用表が試みられた。富士谷成章 の《あゆひ抄 》の〈装図(よそいのかたがき)〉はその最も整備された例である。 執筆者:林 大
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活用 かつよう
同一の単語が文中で果たす役割の違いに応じて、形態を変化させることを「活用」という。たとえば、「書く」という語は、「手紙を書か ない」「手紙を書き 、本を読む」「手紙を書い て、彼に知らせる」「手紙を書く 」「手紙を書け ば、返事がくるだろう」「早く手紙を書け 」「手紙を書こ う」のように、種々の形をとって文中に現れる。これらの形態の差異は、その語の果たす文法的機能の違いに応ずるものであるから、これを「書く」という語の活用とみて、そこに現れる種々の語形を「活用形」とよぶ。なお、「書く」の初頭の「か」のように変化しない部分を「語幹」、末尾の変化する部分を「活用語尾」という。また、活用する語のうち、自立語 を「用言」、付属語を「助動詞」といい、両者を総称して「活用語」ということがある。
[山口佳紀]
「手紙を書く 」の「書く」と、「手紙を書く 時間がない」の「書く」とは、語形が同じであるが、前者は終止法に、後者は連体修飾法にたち、異なる文法的機能を果たすから、別の活用形とみるのが普通である。ただし、そういう考え方をすると、「山は高く 、海は深い」の「高く」と、「背が高く なる」の「高く」とは、前者が中止法、後者が連用修飾法で、別の活用形ということになりそうであるが、実際は両方とも連用形として扱うのが普通である。これは、活用語というものが、普通、形が違えば機能も違うが、機能が違えば形も違うというようにはなっていないためである。一般に、活用形を「未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形(文語では已然(いぜん)形)・命令形」の6種に分ける。これは、文語の活用を整理した場合、「死(し)ぬ・去(い)ぬ」の語が「―な・―に・―ぬ・―ぬる・―ぬれ・―ね」と、六つの異なる形をとり、これが最大の変化であるために、他の活用語もこれを基準として整理した結果である。なお、助詞・助動詞がついた形でしか用いられないような場合は、全体を1語とみて、一つの活用形として扱おうとする立場もある。たとえば、「手紙を書かない 」「手紙を書こう 」「手紙を書けば 」の「書かない」「書こう」「書けば」などは、全体を「書く」の活用形とみて、否定形、志向形、仮定形などとよばれることになり、全体が再編成されることになる。
[山口佳紀]
用言の活用形式は、大別して動詞型、形容詞型、形容動詞型の3種に分けられる。動詞型には、(1)語末の母音の交替によるもの(「書か・書き・書く・書け・書こ」など)、(2)不変部分に対する語尾ル・レなどの添加によるもの(「受け・受ける・受けれ・受けろ」など)、(3)上記2種の混合によるもの(「来(こ)・来(き)・来(く)る・来(く)れ・来(こ)い」など)の三者がある。文語では、(1)四段・ラ変、(2)上一段・下一段、(3)上二段・下二段・カ変・サ変・ナ変となる。口語では、(1)五段、(2)上一段・下一段、(3)カ変・サ変となる。形容詞型は、文語では、「良し」など語幹に「く・し・き・けれ」を添加するもの(ク活用)と、「美し」など「しく・し・しき・しけれ」を添加するもの(シク活用)とがあるが、口語では「かろ・かっ・く・い・けれ」を添加するもの1種である。形容動詞型は、文語では、「静かなり」など「なり」を添加するもの(ナリ活用)と、「堂々たり」など「たり」を添加するもの(タリ活用 )とがあるが、口語では「だ」を添加するもの1種である。助動詞の活用は、だいたい用言のそれに似るが、文語「ず」、口語「う・よう」のように、特殊型がある。
[山口佳紀]
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活用【かつよう】
一般には,動詞が意味・役割(人称,数,時,法,アスペクトなど)によって語形を変化させること。日本語では,用言および助動詞が意味や次にくる語,またそれとの続き方の違いによって語形を種々に変化させること。活用の型には,文語動詞では四段・上一段・下一段・上二段・下二段・カ行変格・サ行変格・ナ行変格・ラ行変格,口語動詞では五段・上一段・下一段・カ変・サ変,形容詞ではク活用・シク活用,文語形容動詞ではタリ活用・ナリ活用,口語形容動詞ではダナ活用,また助動詞では動詞型・形容詞型・形容動詞型・特殊型がある。なお活用形には未然・連用・終止・連体・已然(いぜん)(仮定)・命令の各形を立てる。 →関連項目送り仮名 |曲用 |形容詞 |形容動詞 |動詞 |日本語 |用言 |琉球語
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活用 かつよう conjugation
単語が文のなかで他の単語との関係を表わすために行う語形替変 の体系を「屈折」といい,西洋語では特に動詞の場合を「活用」,名詞,形容詞,代名詞の場合を「曲用 」と呼んでいる。動詞に関係する文法範疇は,人称 ,数 ,時制 ,法 ,態 などである。一方,日本語における「活用」は,用言 (動詞,形容詞,いわゆる形容動詞,助動詞) が,それ自身で終止したり,他の単語や接尾形式に続くときに示す語形替変の体系をさしていうのが普通である。読マ (-ナイ) ,読ミ,読ムなどをいわゆる「語尾」の母音に従って五十音図 にあてはめ,「五段」「上一段」「下一段」「カ行変格」「サ行変格」 (以上口語動詞の例) などの「活用」に分類し,さらにそのなかを未然形,連用形,終止形,連体形,仮定形 (文語では已然形) ,命令形の6活用形に分けるのが学校文法における通例である。ただし,そのなかには単独で自立しえないものを含むなど,単語としての資格や機能の点で異質なものが混在している。
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普及版 字通
「活用」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典(旧版)内の 活用の言及
【言語】より
…ある品詞に属する単語が,意味のちがいを伴って(あるいは,伴わずに)そのあらわれる位置によってその語形の一部を,その品詞に特有の形で交替させることがある。これを〈屈折〉(〈活用〉〈曲用〉などという術語も用いられる)と呼ぶ。屈折には,語形のある部分を1個所,かつ,それを全体として交替させるというものと,ある部分に交替しうる複数の要素が並んでいるもの,2個所以上で交替を示すものなどがある。…
【国語学】より
…これは,それ自体,日本語の音韻組織を明らかにしたものであるとともに,いろいろと,後世まで,国語研究の基礎として利用された。たとえば,今日でも,これは,動詞の活用を説く基礎になっている。また,五十音図と同じころに,〈[いろは歌]〉が作られた。…
【日本語】より
… 文構成のきまりを記述するためには,その最小単位を確定し,次にそれの種類分け(品詞分類)をすることから始めなければならないが,日本語は,朝鮮語など他のいわゆる膠着語と同じく,単位と単位の間や品詞相互の間の連続性が強いということが,英語などの西洋語や,中国語との違いとしてまずあげられるだろう。[品詞] 実質語の代表は名詞,形容詞,動詞で,これは多くの言語と共通するが,日本語の形容詞は動詞と原理的には同じように活用する点で朝鮮語と相似し,英語など西洋語とは異なる。学校文法で形容動詞と呼ばれる〈元気,親切,静か〉などの語類は,名詞と形容詞の中間的な性格をもっている。…
【品詞】より
…【品詞の諸性質】 (1)多くの言語においては,ある単語がその現れる個所によって,意味の,ある種の変異を伴いつつ,あるいは,伴わずにその語形(の一部)を交替させることがある。いわゆる屈折(活用,曲用)であるが,二つの屈折を示す単語において,その屈折の性格(屈折によって変異する部分の音形のことではなく,屈折全体の性格)が一致するならば同一品詞に属する(あるいは,少なくとも,近い関係にある二つの品詞に属する)といえるし,その屈折の性格の異なる二つの単語あるいは屈折を示す単語と示さない単語は別の品詞(あるいは,少なくとも異なる下位範疇(後述))に属するといえる。なぜならば,これこれこういうものを表すからといってこういう性格の屈折を有しなければならない理由などなく,したがって,屈折の性格(有無を含む)の共通性や差異は,表すものの性格上の共通性や差異によっては説明しきれるわけのものではないから,その言語の品詞分類と密接な関係を有するといえるのである。…
※「活用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」