…かくて鈴印の争奪戦に端を発し,仲麻呂は公然と反旗を掲げることとなったため,官位・氏姓を剝奪され,封戸・雑物も没収されたうえ,不意をうたれて淳仁天皇と行動をともにできなくなったので,氷上塩焼(塩焼王)を天皇に擁立し,永年拠点としてきた近江国の国衙に拠って,みずからを正統と称し,孝謙上皇方に対抗しようとした。しかし,田原道を先回りした追討軍佐伯伊多智に妨げられて勢多(瀬田)橋を渡ることができず,やむなく湖西を越前国に逃入しようとしたが,この計画も伊多智らが先に越前に入って国守であった子息辛加知(しかち)を殺し,愛発関(あらちのせき)を閉じたため,果たさず,後退して高島郡三尾埼に至ったところを,藤原蔵下麻呂(くらじまろ)らの追討軍主力に挟撃され,勝野鬼江から湖上に逃れようとしたが,石村石楯(いわれのいわたて)に捕らえられ,一族与党34人とともに湖浜で斬首された。乱後,淳仁天皇は廃位され,淡路に幽閉されたが,765年(天平神護1)脱走を企てて怪死し,新しく道鏡が大臣禅師に任ぜられて政権を掌握した。…
※「佐伯伊多智」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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