官吏(読み)かんり

世界大百科事典 第2版の解説

かんり【官吏】

一般に役人,官員をさすが,狭義には明治憲法体制のもとで秩序づけられたそれの制度上の呼称である。その制度は明治憲法10条の天皇の官制大権と,19条の臣民就官能力の規定とに基づき,さまざまの天皇の勅令によって定められていた。つまり戦後の国家公務員法と異なり,明治憲法期には官吏制度全般を包摂した単一の法典はなく,任用,給与,服務,分限,懲戒などの各分野ごとに個別の法令が存在したのである。しかも官吏の国に対する勤務関係は私法上の雇傭契約関係とは異なり,公法上の倫理的隷属関係と理解されていた。

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大辞林 第三版の解説

かんり【官吏】

国家公務員の通称。役人。官員。 「高級-」
旧憲法下で、天皇の大権に基づき任官され国務に就いた高等官と判任官。私法上の契約により国務に就いた雇員・傭人と区別されていた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

官吏
かんり

明治憲法下で、天皇の大権に基づいて任命され、統治権の総攬(そうらん)者たる天皇への人的な忠誠心によって義務づけられ、無定量の公務を担当・執行するもの。明治憲法下の官吏は、身分的に天皇に隷属しつつ、国民に対しては特権的官吏団を形成していた。日本国憲法(7条・73条)、法律においても官吏の語が使用されるが、憲法上(15条)、官吏の観念は本質的に変わり、国家公務員とほぼ同義である。例外として会計法、恩給法上の官吏概念がある。[平田和一]

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精選版 日本国語大辞典の解説

かん‐り クヮン‥【官吏】

〘名〙
① 役人。官人。官員。
※続日本紀‐天平宝字三年(759)六月丙辰「官吏不行、此何以教士民
※島崎金次郎宛大田南畝書簡‐享和元年(1801)五月二五日「官吏にて一向役所などより不申来候もおかしく候き」 〔史記‐始皇本紀〕
② 旧憲法下で、国家に対し、忠順に無定量の勤務に服するために、国家から特に選任されたもの。その任命権は天皇の大権に属していた。現在では国家公務員とほぼ同じ意で使われる。
※官吏服務紀律(明治二〇年)(1887)一条「凡そ官吏は天皇陛下及天皇陛下の政府に対し忠順勤勉を主とし法律命令に従ひ各其職務を尽すべし」

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世界大百科事典内の官吏の言及

【官尊民卑】より

…政府や官吏を尊いものとし,一般人民や民間の事業を卑しいものとする考え。福沢諭吉の《福翁百話》のなかに,〈吾々学者流に於ては人権平等の論を論ずること久し。…

【官僚制】より

…官僚制ということばは多義的で,能率的な組織をさすこともあれば逆に組織の非能率をさすこともあり,また専門官吏による行政をさすこともあればこれら専門官吏が権力を掌握している状態をさすこともある。これは官僚制現象自体の動的な性格,構造によるもので,この点を理解すればその意味を整合的に説明することも困難ではない。…

【公務員】より

…大日本帝国憲法下では,官吏,公吏などの言葉が使われていたが,国民主権の日本国憲法下では,国民の公僕という意味をこめて公務員という言葉が主として使われるようになった。 実定法上,最も広い意味では,国または地方公共団体の公務に従事するすべての者をさす。…

※「官吏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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