日本大百科全書(ニッポニカ) 「余因子」の意味・わかりやすい解説
余因子
よいんし
n次の正方行列Aにおいて、その第i行および第j列を除いてできる(n-1)次の正方行列の行列式をDijとする。すなわち
Dijを行列Aの(i,j)成分aijの小行列式という。Dijに
Aij=(-1)i+jDij
のようにして符号をつけた数を(i,j)成分aijの余因子、または余因数という。余因子の一つの役割は、行列式の余因子展開である。行列Aのi行の成分の余因子を
Ai1,Ai2,……,Ain
とすると、Aの行列式detAを次のように表すことができる。
(1)detA=ai1Ai1+ai2Ai2+……+ainAin
同様に第j列の成分の余因子によって
(2)detA=a1jA1j+a2jA2j+……+anjAnj
と表すことができる。(1)、(2)を行列式の余因子展開という。
余因子の第二の役割は、行列Aの逆行列A-1への応用である。すなわちdetA≠0のとき、Aの逆行列は次のように表される。

この右辺に書かれた行列は余因子の行列(Aij)の転置行列である。
[寺田文行]


各i=1,2,……,nについて
上で得た値dijをAの(i,j)余因子という。dijを(i,j)成分にもつ行列D=(dij)を考えれば,上の関係はA(tD)=(tD)A=(det A)I(Iはn次の単位行列)ということと同じである。…
とおく。これは
の余因子といわれる。(i1,……,ir),(j1,……,jr)を固定すると,
これは行列式のある行または列についての展開の一般化になっており,ラプラスの展開定理といわれる。…