側頭葉症候群(読み)そくとうようしょうこうぐん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「側頭葉症候群」の意味・わかりやすい解説

側頭葉症候群
そくとうようしょうこうぐん

脳血管障害や脳腫瘍(しゅよう)によって側頭葉が障害されたときにみられる症候群である。側頭葉の横側頭回(ヘシュルHeschl横回)の聴覚領は両側性支配のため、聴覚障害は片側だけではおこらず、両側皮質が侵されて初めて現れる。すなわち、皮質聾(ろう)または聴覚失認がみられる。海馬回鉤(かいばかいこう)の病変では嗅覚(きゅうかく)障害がみられ、味の幻覚も海馬発作の前兆としてくることが多い。言語中枢のある優位半球(左半球)障害では感覚失語(ウェルニッケWernicke失語)がみられる。これは言語了解ができなくなる失語で、発語はできるが錯文や錯語が多い。また側頭葉てんかん(海馬回の鉤発作uncinate fit)は、幻覚、記憶障害、発作的夢幻状態で発症する。口をもぐもぐ動かす動作を伴うこともある。視野障害としては、上部同側4分の1半盲性視野欠損が特有である。そのほか摂食や性行動の異常がみられる。

[荒木五郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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