話し言葉で意図した言葉と別の誤った言葉をしゃべり,間違いに気づかない現象をいう。保続perseveration(一度発した言葉や動作を,その後の質問や命令に際し,内容に関係なく繰り返す現象)とともに,感覚失語や伝導失語にみられる。これらの失語症では,表現しようとする言葉のイメージ(言語心像)を的確に頭のなかに思い浮かべる機能が障害されているために(内言語障害),間違った言葉が浮かんでしまう。しかも,通常は頭に浮かんだ言葉をその音響像で正誤の照合をするのだが,この機能も損なわれているので,誤った言葉が口からでても,その誤りに気づかない。単語の言い間違いを語性錯語といい,単語を構成する音を言い間違えるのを字性錯語というが,これらは,保続や構音障害による音韻の変化とは区別される。内言語障害は書字言語にも必然的に同様の誤りを起こす。単語を読み書きする際に,誤った別の単語として読むのを錯読paralexiaといい,誤った別の単語を書くのを錯書paragraphiaという。錯書は自発書字と書取りでみられ,写字ではみられない。錯文法を伴い,助動詞,助詞,時制が混乱することもある。
執筆者:石黒 健夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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