前兆(読み)ぜんちょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

前兆
ぜんちょう

物事の起る前に現れる知らせのこと。さまざまな自然現象や人事についていわれ,まったく根拠のない俗信が多いが,長年の自然観察や人生経験に基づくものもある。からすが奇妙な声で鳴くと死人があるといったことは日本全国でいわれるが,中国やヨーロッパなどでもいわれている。大雪は豊年兆し,きじがけたたましく鳴くと地震がある,ありが騒ぐのは洪水の兆しであるなどが多い。また同じ前兆でも地域によって,吉事凶事の反対の意味を示すものがある。日本で前兆とされる事象のなかには大陸伝来の思想に基づくものが多い。

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デジタル大辞泉の解説

ぜん‐ちょう〔‐テウ〕【前兆】

何かが起こる前に現れるしるし。まえぶれ。きざし。「噴火の前兆」「不吉な前兆

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

前兆
ぜんちょう

未来に関する情報を与えると信じられている事象。予兆ともいう。ただし現在や過去のできごとを示す兆(しるし)もあり、この場合、現在や過去の秘められたことが原因となって現在にその兆が現れていると考える。この兆が意味することを解読する作業、過程が占いであり、とくに兆が人為的につくられる場合に占いという。一般に前兆という場合は自然的、客観的に現れるものをいい、具体的には太陽、月、星などの天体現象、風、雨、雲、雪、雷などの気象、特定の動物や植物、人間の身体や行動、衣食住などの事物、現象を、とくにそれらが通常とは異なる現れ方をしたときに、なにかの前兆とする。たとえば日食、月食、流星、異様な雲や光、火山の爆発、奇妙な鳴き声をあげるなどの動物の異常な行動、白変種などの動物の出現、めったに咲かない花が咲くなどの植物の異常、くしゃみや夢などの人間の不随意行動、物が落ちたり食器が壊れるなどの器物の異変などである。実例をあげれば、鳥類が前兆とされる社会は多く、ヨーロッパではコマドリが部屋に飛び込む、カラスが家の棟で鳴く、ハトが窓に当たる、フクロウが夜鳴きすることは、だれかの死の前兆とされる。ただし前兆の解釈は社会によって、また同じ社会でも状況によって異なる。たとえばメキシコのツォツィル語マヤ人の場合では、ハチドリをチャムラ村では凶兆と考えるが、隣のシナカンタン村では吉兆とする。カリブ海地域では、海上で見る虹(にじ)は吉兆だが、陸上で見る虹は凶兆である。すなわち、前兆とそれが意味することとの関係は神秘的、超自然的であり、それぞれの社会で恣意(しい)的に定められている。しかし、前兆のなかには、たとえば動物の異常な行動と地震の関係、ハチの巣の位置と洪水の関係のように、長年の観察と経験に基づき、ほとんど自然的因果関係と考えられるものも少なくない。いずれにせよ前兆に対する信仰は、人知の及ばないことをなんとかして知りたいと欲する人間の心理に根ざしており、現代社会でも伝えられている。[板橋作美]

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世界大百科事典内の前兆の言及

【癲癇】より

…一次性全般癲癇は癲癇性放電が全脳に一度に波及するもので,汎性視床投射系を介すると考えられることから中心脳性癲癇ともいわれる。かつて真性,症候性の出現率の比は約3対1とされたが,現在では前兆を伴う全般強直間代痙攣を症候性癲癇とみなすなどの診断技術の進歩によって,真性は50%以下とみられるようになった。
【発現率】
 発現頻度は0.3~0.5%であるが,最近1%という数字もある。…

※「前兆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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