…しかし,必ずしもその初めから新しい技法を売り出したものではなく,在来の技法の優秀なものを活用して,時代に応ずる染衣裳を創造したとみるべきで,その後も幾多の改良,工夫が加えられてきた。この伝統は明治になっても受け継がれ,写糊(うつしのり)(染料に糊をまぜた色糊を生地に塗り,これを蒸したのち水洗し染める)の発明,無線友禅,石版友禅の発達となり,またモスリン,ビロードにも応用され,さらに機械捺染も行われるようになった。 江戸期には友禅染のほかに,吉半(よしなか)染あるいは小色染,加賀染といわれる,友禅染同様の細かい彩色法による染めや,正平染といわれた油絵具による染め,光悦染と呼ばれた蠟染などさまざまな技法があり,それらが技を競っていたが,いつの間にか影をひそめてしまったなかで,型染の小紋や中形は友禅とともに今日まで続いている。…
※「写糊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」