改訂新版 世界大百科事典 「凍結精液」の意味・わかりやすい解説
凍結精液 (とうけつせいえき)
frozen semen
保存液で希釈した精液を,液体窒素(-196℃)で凍結したもの。家畜の人工授精に用いる。家畜精子を,卵黄,クエン酸ナトリウム,ブドウ糖を主体にした保存液で希釈して5℃前後で保存した場合は,4~5日しか受精能力を保持できなかった。しかし,1952年にイギリスのポルジC.Polgeらが抗凍結剤としてグリセリンを添加(希釈精液総量の7%)した保存液を用いてドライアイス(-79℃)での凍結に成功してからは,凍結保存に切り替わった。当初は1ヵ月程度の保存であったが,現在は液体窒素によって半永久的に受精能力を保持できるようになった。なお,グリセリン添加希釈精液を直接ドライアイスの上に滴下して凍結させ,液体窒素で保存する錠剤化凍結精液もある。
執筆者:田中 亮一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報