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人工授精 じんこうじゅせいartificial insemination

翻訳|artificial insemination

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人工授精
じんこうじゅせい
artificial insemination

性交によらず人為的に精液を子宮内に注入して受精させること。不妊の治療法の一つとして行い,配偶者間人工授精非配偶者間人工授精とがある。精子と卵子を体外で人工的に受精させることは体外受精という。

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デジタル大辞泉の解説

じんこう‐じゅせい【人工授精】

人為的に雄から採取した精液を雌に注入して受胎させること。ヒトでは不妊症の対策として、また家畜などでは品種改良や繁殖のために行われる人工媒精人為授精。→子宮内人工授精

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百科事典マイペディアの解説

人工授精【じんこうじゅせい】

性交によらず注入器によって女性(雌)の性殖器内に精液を注入し,妊娠させる操作。1780年にL.スパランツァーニがイヌによって成功し,人間では1799年にJ.ハンターの報告があり,日本では1949年の安藤画一の報告が最初。
→関連項目AIDバイオエシックス

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世界大百科事典 第2版の解説

じんこうじゅせい【人工授精 artificial insemination】

人工媒精ともいう。人為的に雄性生殖器より精液を採取し,精液・精子検査を行い,良質の精液のみを雌性生殖器内に注入して,受胎,妊娠を図る一連の作業をいう。両性生殖を営む動物の精子は,液体の中でのみ運動可能で,受精のためには,卵子と精子が同じ液体の中に存在することが前提になる。そのため,陸生動物では,交尾(性交)によって雄が直接雌の体内に精子を送り込み,精子は雌の体液をさかのぼって卵子と接触して受精することになる(体内受精)。

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大辞林 第三版の解説

じんこうじゅせい【人工授精】

人為的に雌雄の生殖細胞を接触させ、その間で受精を行わせること。人為授精。人工媒精。
人間において、男性から採取した精液を女性の子宮に注入し、卵管で受精させること。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人工授精
じんこうじゅせい

人為的な手段で雄の精液を採取し、これを雌の内部生殖器内に注入して受胎を成立させる技術をいう。授精inseminationとは雌の生殖器内に精子を授けることで、かならずしも精子と卵子の融合である受精fertilizationを招来するとは限らない。したがって体外受精の場合は人工受精の語を用いるが、体内で受胎させる場合は人工授精で、両者を混同してはならない。[正田陽一]

家畜の場合

人工授精の可能性を初めて実験的に証明したのは、イタリアの生物学者スパランツァーニで、1780年にイヌを用いて試験を行った。そしてこの技術は1907年、ロシアのイワーノフE. I. Ivanov(1870―1932)がウマに応用して成功したことから、家畜の改良、増殖のうえできわめて有効な手段として、広く普及し実用化されることになった。ことに1952年、ウシの精液の凍結保存法が開発されて以来、ウシとくに乳牛においては凍結精液を用いた人工授精が急速に広まった。現在日本の乳牛の99%が人工授精により繁殖しており、そのうちの98%は凍結精液を用いている。[正田陽一]
人工授精の効果
家畜の繁殖にこの技術を応用した場合の効果には次のようなものがあげられるが、そのなかでも育種上の効果がもっとも大きい。すなわち、1頭の雄畜の子の数を自然交配の場合の数百倍にもすることが可能であるので、優良な種畜の有効な利用ができ、雄についての厳しい選抜が可能になる。また後代検定も早期に実施できるので改良の速度も増進する。管理の面からは、交配のための家畜の輸送が不必要となり、種畜の広範囲な利用ができるため、個々の農家または牧場で雄畜を飼養する経費、労力が節減される。衛生面では生殖器伝染病の予防にも役だつうえ、故障で自然交配ができない個体も繁殖に供用できるなどの利点がある。
 このほか最近では、絶滅に瀕(ひん)した希少動物を飼育下で繁殖させる必要性が高まってきて、その場合に野生動物のペアリングの困難性を回避するためにも、この技術がしばしば利用される。[正田陽一]
人工授精の技術

〔1〕精液採取 もっとも普及しているのは人工腟(ちつ)法である。擬雌台もしくは発情雌畜に雄を乗駕(じょうが)させて人工腟により採精する。このほか体の一部に電気刺激を与えて射精させる方法や、マッサージ法があり、家禽(かきん)類では腹部マッサージ法が広く用いられている。
〔2〕精液の性状検査 採取した精液はまず精液量、濃度、色、臭気、水素イオン濃度(pH)などを肉眼的に検査し、ついで精子活力、精子数、奇形精子率を顕微鏡下で調べる。
〔3〕精液の希釈・保存 精液は保存のため、また多数の個体に分注する必要から希釈液で希釈される。液としては卵黄緩衝液や牛乳緩衝液が用いられている。保存は液状あるいは凍結状態でされるが、凍結保存の場合は凍結の悪影響から精子を守るため希釈液にあらかじめグリセリンを添加しておき、ドライアイス(零下80℃前後)か液体窒素(零下196℃)を用いる。凍結した精液は受精能力を低下させることなく数年間も保存できる。
〔4〕精液の注入 凍結精液は解凍してから、液状保存の場合はそのまま注入器を用いて雌畜の生殖器内に注入する。注入部位は各動物種により一定しないが、ウシでは子宮内か頸管(けいかん)深部で、注入精子数は通常2500万~5000万である。注入の時期は、排卵の時間、精子の受精能力保有時間を考え適期を選ばねばならない。ウシでは発情の中期から末期へかけてとされているが、受胎率を高めるためには1発情期に2回授精することが望ましい。[正田陽一]

ヒトの場合

人工授精とは、精子を受精の場である卵管膨大部の近くに送り届けることであり、男性不妊の治療法として汎用(はんよう)されている。精子の数が少ない、あるいは精子の運動が不良な精子無力症では、受精に必要な数の精子が卵管膨大部まで到達できない。このような症例では、用手的に採取し調整した精子を、排卵日に子宮頸管あるいは子宮腔(くう)内、さらには卵管内に注入し、卵管内で受精が成立することを期待する。人工授精では体内で受精がおこる。[吉村泰典]
種類
夫の精子を用いるものを配偶者間人工授精(artifical insemination with husband's semen:AIH)、夫以外の提供者の精子を用いるものを非配偶者間人工授精(artifical insemination with donor's semen:AID)という。[吉村泰典]
適応
一般に、人工授精の適応は、(1)精子・精液の量的・質的異常、(2)機能性不妊、(3)射精障害・性交障害などがあげられる。人工授精で妊娠可能な総運動精子数は、10×106個以上とされる。一般に原精液の総運動精子数が10×106個以下の場合には、不妊期間が2年以上であるならば体外受精の適応となる。
 原因不明不妊などで、排卵期にあわせるタイミング指導を一定期間行っても妊娠に至らない場合に、人工授精が選択される。3年間以上の不妊期間をもつ原因不明不妊症の患者では、タイミングのみでは周期ごとの妊娠率が3%にすぎないとされているので、人工授精、体外受精へと移行する。排卵誘発と組み合わせた場合、人工授精の成功率は上昇する。原因不明不妊症といわれているもののなかには、卵管采(さい)における卵子のピックアップ障害や受精障害などが含まれることがあり、これらの症例では人工授精により妊娠を期待できないので体外受精を早めに考慮する。AIHの周期あたりの妊娠率は7~8%である。[吉村泰典]
方法
一般に卵子の受精能力は排卵後約12~24時間までで、精子の寿命は2日前後とされており、排卵に近いところでタイミングよく人工授精を実施することが重要となる。
 人工授精と組み合わせて、排卵誘発剤であるクロミフェンやゴナドトロピン製剤などがよく用いられている。原因不明不妊症の場合、過排卵卵巣刺激はクロミフェンでもゴナドトロピン製剤でも明らかに有効であると考えられているが、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(卵巣が腫大(しゅだい)したり、腹水が貯留したりする症状)などの副作用が起こる可能性がある。3個以上の卵胞が排卵する可能性のある場合は、人工授精のキャンセルを考慮する。
 禁欲期間は2~3日間のほうが妊娠率が高い。また採取から30分以内に処理をして、90分以内に人工授精をしたほうが妊娠率が高いといわれている。精子の処理法については、パーコールpercoll密度勾配(こうばい)法、スイムアップswim-up法により精液、または洗浄した精子を用いる。パーコール密度勾配法は、密度勾配担体であるパーコール(コロイド状シリカをポリビニールピロリドンでコーティングした粒子)を用い密度の高い成熟した精子を分離する方法である。スイムアップ法は、精液、または洗浄精子に培養液を重層し、30~60分間培養液の中で静置する。運動性良好な精子が培養液中に泳ぎ上がってくるため、これを回収、洗浄し、媒精に供する。
 人工授精のチューブは、金属性授精針に変わり、柔らかい授精用カテーテルが推奨されるようになった。また精子浮遊液はゆっくり15秒以上かけて注入する。実施後、10分以上安静にしたほうが、すぐに動くより妊娠率が高い。人工授精後、感染症予防のため抗菌薬を投与することが多い。
 人工授精の利点は、低浸襲性、低コストであることであり、体外受精の前段階の治療として、一定の評価は得られている。しかし、その適応、方法、成績は施設間で異なる。母体の年齢なども考慮し、ただ漠然と人工授精を繰り返すことなく、体外受精や顕微授精など適切な治療法を提示することが大切である。[吉村泰典]
非配偶者間人工授精(AID)
適応はこれ以外の方法では拳児(きょじ)(子どもを得ること)の可能性のない病態、原則として無精子症である。それ以外に臨床的に細胞質内精子注入法(intracytoplasmic sperm injection:ICSI)を複数回実施して主治医が妊娠の可能性はないと判断した場合、あるいは夫の精液を使用して妊娠を図った場合に母体や児に重大な危険が及ぶと判断される場合(夫が重篤な感染症にかかっている場合など)も適応となる。日本産科婦人科学会のAIDに関する見解があり、これに準拠して実施する。
 治療に先だって、夫婦が法的に婚姻しているかどうか、夫の同意があるかを確認することが、生まれてくる子どもの法的な地位を確定するために必要である。また同意確認については、治療のたびごとに行う。エイズなどの感染症のリスクを低減させるために、精液を洗浄した後の精子浮遊液を6か月間凍結した後、提供者に感染症がないことを再度確認する。その後融解した精子浮遊液を排卵日にあわせて妻の子宮内に注入する。[吉村泰典]
 人工受精(人工授精・体外受精)の法律問題については「人工受精」の項目を参照。[編集部]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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世界大百科事典内の人工授精の言及

【家畜】より

…繁殖季節には雌は周期的に発情が訪れ,この期間だけ雄を許容するから,発情兆候をみて適期に交配する。最近は人工授精の技術が普及したので交配のため家畜を輸送する手間が省け,また少数の優れた雄畜を有効に利用することが可能となった。精液は超低温で凍結すれば数年間の保存も可能である。…

【採卵】より

…人工採卵には搾出法(外部から手で圧して卵を出す)と切開法とがあり,前者は繰り返し何年か産卵するニジマス,イワナや,小型魚のアユ,ワカサギで行われ,後者は卵を産むと死んでしまうサケ,ヤマメなどに用いられる。人工採卵のあとには人工授精が必要であり,これには湿導法と乾導法とがある。前者は水中の卵に精液を加える方法であり,後者は乾いた容器の中で卵と精子を混合し,その後で水を加える方法である。…

【実子】より

…ところが,これまで,母子関係では,母親が分娩するという事実に基づき血縁が当然に発生すると考えられてきた。しかしながら,人工授精あるいは体外受精児の誕生,体外受精卵の代理母の子宮への移植という急激な医学の発達により,受精,子宮への着床,懐妊が人工的に意のままに行われ,しかも,これらの過程に夫婦以外の第三者が介在するという状態になると,血縁のもつ意味があいまいになってくる。すでにAID(提供者による人工授精)がこの問題を顕在化させてきたが,今後さらに,たとえば,体外受精で,受精卵が妻以外の女性の子宮に移植され,この代理母が妊娠,出産することになれば,その子と代理母間には紛れもなく血縁は存在する。…

【受精】より

…このように精子を,卵子に対して水性環境中を運動して接近しうるような状態に置くことを媒精または授精inseminationという。人工的に授精を施すのが人工授精artificial inseminationである。人工授精は動物の繁殖技術として,水産や畜産で広く用いられている。…

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