分子内錯塩(読み)ブンシナイサクエン

化学辞典 第2版 「分子内錯塩」の解説

分子内錯塩
ブンシナイサクエン
inner complex salt

8-キノリノール(オキシン)とアルミニウムイオンの化合物Al(C9H6NO)3は,形式的には Al3+ と(C9H6NO)3イオン結合の塩と考えられるが,実際には,オキシンがOとNで配位しているキレート六配位錯体である.このように,一見原子価のみで結合しているような形をとりながら,じつは分子内で側原子価も用いて非電解質錯体を形成しているとき,これを分子内錯塩という.現在では,キレート化合物の名称が用いられるので,あまり使われなくなった.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の分子内錯塩の言及

【キレート試薬】より

…同様の非酸性-NH2基および=NH基をもつ試薬として,三座配位のジエチレントリアミン,および四座配位のトリエチレンテトラミンなどがある。(化学式)アミノ酸,たとえばグリシンのように一つの分子中に酸性基と非酸性基とをもつ試薬の場合には,キレート生成によって中心原子の酸化数と配位数とを同時に満足する場合が多く,このときできる電気的に中性のキレート錯体はインナーコンプレクスinner complex salt(分子内錯塩)と呼ばれ,沈殿試薬として重要なものが多い。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は非酸性の≡N基二つと酸性の-COOH基四つをもつ試薬で,ふつう六座および五座配位子として働く。…

※「分子内錯塩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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