日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオン結合」の意味・わかりやすい解説
イオン結合
いおんけつごう
ionic bond
化学結合の一つ。陽イオンと陰イオンとが集まって生成するイオン結晶中での、陽イオンと陰イオンの間にみられる結合。イオン結晶中では、イオン間にみられる静電引力は方向性がなく、一つずつのイオンはできるだけ多数の反対符号のイオンを周りに、しかもできるだけ近くに引き付けようとする。しかし正負のイオンが接近すると、それぞれのイオンにおける外殻電子による反発力が大きくなり、引力と反発力が平衡に達した一定の位置で安定となる。
化学結合のなかでも共有結合とともにもっとも基本的な結合であるが、実際にみられる化学結合では、純粋なイオン結合と考えられる場合はそれほど多くなく、普通、イオン結合といわれるものも、多くはいくらかの共有結合的要素が入ってきている。また普通、共有結合といわれるものにも、多くはいくらかのイオン結合的要素が入ってきている。
[中原勝儼]
『藤谷正一・木野邑恭三・石原武司著『絵とき 化学結合の見方・考え方』(1987・オーム社)』▽『ミシェル・シュアール、ブリジット・プロー、リオネル・プロー著、中原勝儼・一国雅巳訳『物理化学概説』(1988・東京化学同人)』▽『山内淳・平山鋭・谷口仁・東長雄著『物理化学の基礎』(1989・朝倉書店)』▽『イアン・S・バトラー、ジョン・F・ハロッド著、荻野博・下井守・飛田博実訳、荻野博監訳『無機化学』上(1992・丸善)』▽『E・カートメル、G・W・A・ファウルズ著、久保昌二訳『原子価と分子構造』(1993・丸善)』▽『一國雅巳著『基礎無機化学』改訂版(2008・裳華房)』