化学辞典 第2版 「加速器年代測定法」の解説
加速器年代測定法
カソクキネンダイソクテイホウ
accelerator method for radioactive dating, accelerator method for age determination
加速器を利用した質量分析法(加速器質量分析法)による年代測定法.通常の放射能減衰の測定による年代決定に比べていちじるしく精度が高く,短い測定時間と少量の試料ですむので,近年盛んに用いられるようになった.たとえば,14C の放射能減衰測定法(年代測定)の場合,半減期5730 y でβ線のエネルギーが0.156 MeV と低く,しゃへいを十分にして低バックグラウンドで,統計的誤差を小さくするため,比較的多量の試料(1~10 g)で長時間(1.5~15 h)測定する必要がある.本法では,β線ではなく試料中の 14C 原子数そのものを計数するので試料も1~10 mg でよく,14N は媒質中のエネルギー損失の違いによって選別できるのでバックグラウンドの心配もしなくてよい.測定時間も短くてすむ.試料が少量でよいことは貴重な文化財,考古学試料を対象とすることを可能にする.古い試料ほど,放射能が弱くなるので,従来法では1~2半減期が年代測定限界であったが,この方法では,およそ20半減期までさかのぼることができる.ただし,加速器を使用するので,試料をイオン化するイオン源とサイクロトロン,タンデム加速器などを必要とする.14C のほか,10Be(1.51×106 y),26Al(7.17×105 y),36Cl(3.01×105 y),41Ca(1.03×105 y),129I(1.57×107 y),236U(2.342×107 y)(( )内は半減期)などが利用できるので,年代測定対象範囲が広がった.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報