翻訳|measurement
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自然現象,社会現象,生理現象などを定量的に記述するためには,これらの現象に関連する量の大きさを数値,または符号を用いて表す必要がある。そのために行われる作業を測定という。量と数とは元来互いに関係のないものであるから,量の大きさを数値で表すためには両者の間に1対1の対応の規則を設けておく必要がある。これを測定の尺度という。例えば物理量の測定においてはすべての量について単位の大きさを定めてこれに1を割り当て,測定量が単位の何倍であるかを求めてその比の数値で測定量の大きさを表す。このような尺度を比例尺度という。このほかに間隔尺度,順位尺度,名義尺度があり,物理量以外の量の測定に用いられている。
物理量は物理法則によって他の物理量と関係づけられているので,ある物理量を測定するのに,それと同種類の基準と比較するという直接測定の代わりに,それと関係のある他のいくつかの物理量を測定し,その結果を用いて測定値を求めるという方法が使える。これを間接測定という。例えば重力の加速度gを測定するのに,真空中での物体の落下距離と落下に要した時間を測定し,その結果を運動方程式の解に代入してg値を求めるのは間接測定である。このようにしてあらゆる物理量は測定可能であるが,とくに,ある物理量の測定を基本量だけの測定から導くような間接測定を絶対測定という。前に述べたgの測定は絶対測定である。また,長さや電流などの基本量の測定で,基本単位の定義によって決められた量を実現させ,それを用いて行う測定も絶対測定という。一方,圧力の測定に圧力計を,電圧の測定に電圧計を用いるのは比較測定である。これらの計器には目盛が備えられてあり,その目盛には基準と比較して数値が刻まれてある。したがって同じ種類の量と比較して測定が行われることになる。比較測定は簡便なので広く行われるが,基準となる目盛の正確さがつねに保たれるとは限らないので必要に応じて校正しなければならない。また,組立量の絶対測定は,その量を定義する物理法則によっているから,実際の測定においてその法則が正しく成り立っているかを吟味しなければならない。
測定を実施するために装置系を構成するが,その構成法として偏位法,零位法,補償法,合致法などがある。偏位法はもっとも簡単で,測定量を原因としその直接の結果として生ずる指示から測定量を知る方法である。ガラス温度計,ブルドン管圧力計などがその例である。測定量と独立に,大きさを調整できる既知量を別に用意し,既知量が測定量と等しくなるように調整して(これを平衡させるという),そのときの既知量の大きさから測定量を知る方法を零位法という。既知量と測定量との大小を検知するための検知器を備え,また,その差を小さくするためのフィードバック操作が必要であり,そのため偏位法よりも複雑な構成となるが,精度のよい測定ができる。測定量からそれにほぼ等しい既知量を引き去り,その差を測って測定量を知る方法を補償法という。既知量が精度よく定められてあれば,測定量との差の測定精度があまりよくなくても精度のよい測定値が得られるのが補償法の利点である。周波数の精密測定に広く利用されている。目盛線などの合致を観測して,測定量と基準として用いる量との間に一定の関係が成り立ったことを知り測定値を求める方法を合致法という。カメラのレンジファインダーなどは合致法を使った例である。このほか,置換法,差動法などがある。
測定は対象に関する知識が十分でないときに行われるが,測定の結果完全な知識が得られるという保証は何もない。測定のために援用した法則自身の,あるいはそれを測定系によって実現する際の不完全さや,測定時における環境変動など外部からのじょう乱などのために,信号の質が低下したりゆがめられたりして測定値として“真の値”と異なる値が得られることが多い。測定値から真の値を差し引いた値を誤差というが,これは概念規定である。真の値がわかっていれば測定の必要はなく,わからなければ誤差が求まらない。実際は,測定を反復して得られた複数個の測定値から誤差を推定する。
誤差には二つの要因がある。一つは測定値にばらつきを生じさせるもので,これを偶然誤差という。偶然誤差は平均が0であると考えるので,偶然誤差を含む多数個の測定値の平均を計算すれば,それは測定値の母集団の母平均を与える。この母平均は必ずしも真の値と等しいとは限らない。この差を偏りといい,偏りを与える要因を系統誤差という。系統誤差があれば測定を何回反復しても真の値は求まらないから,系統誤差をなくしたり,また,その要素からの偏りへの寄与を推定して真の値により近い測定値を求めることが必要である。
執筆者:森村 正直
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ある物や事象が、それと同じ種類の量の約束された一定量の何倍であるかを数量で表すこと。この約束された一定量を単位という。もっとも簡単な場合は、たとえば長さの単位で目盛られた物差しで物の長さを計ることで、このように計るべき対象の量と同種の量で直接計ることを直接測定という。しかし一般に直接測定が行える場合は少なく、理論を媒介にして間接的に測定することのほうが多い(間接測定という)。たとえば体積は各部の長さを計って計算によって求めるのが普通である。一般に各種の物理量は少数の、互いに独立した物理量を選んで単位を決めれば、他の量の単位は物理学の法則や定義を利用して組み立てることができる。この少数の量を基本量といい、単位を基本単位、組み立てられた単位を組立単位または誘導単位という。組み立てられた量の測定を基本量だけの測定から導くこと、および定義によって決められた量を実現させそれを用いて行う測定を絶対測定という。長さの単位「メートル」の定義は特定の光の波長を用いて実現されるが、この光の波長で直接ブロックゲージの長さを求めるのはこの例である。
なお、最近では「測定(measurement)」は、ある量の値を実験的に得るプロセスと解されているのに対し、「計量計測(metrology)」は、測定の科学とその応用と理解され、より幅広い意味をもつとされている。
測定の方法には比較測定、遠隔測定、零位法、偏位法、置換法、合致法、補償法、差動法などがある。比較測定は直接測定と同義で、遠隔測定は測定量の検出信号を、離れている受信器に伝えて行う測定。零位法は測定量とは独立に調整できる同種の既知量を用意し、測定量と一致させる測定。偏位法は測定量を原因とし、その直接の結果として生ずる指示による測定。置換法は測定量と既知量とを置き換えて2回の測定結果から求める測定。合致法は目盛り線などの合致を見て測定量と基準量の関係から測定する方法で、バーニヤ付きノギスによる方法はこの一つである。補償法は測定量からそれにほぼ等しい既知量を引き去り、その差を測って求める方法。差動法は同種類の2量の作用の差を利用する方法である。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
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