測定(読み)ソクテイ(その他表記)measurement

翻訳|measurement

デジタル大辞泉 「測定」の意味・読み・例文・類語

そく‐てい【測定】

[名](スル)ある量の大きさを、計器や装置を用いて測ること。「気温の変化を測定する」
[類語]実測測量観測測る計測計量秤量しょうりょう秤量ひょうりょう計時目測

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精選版 日本国語大辞典 「測定」の意味・読み・例文・類語

そく‐てい【測定】

  1. 〘 名詞 〙 計器や装置を用い、ある現象を特徴づける数量を読みとること。広義には測定値から理論に従って計算で数量を決定する場合も含む。
    1. [初出の実例]「此図は馬児珍(マルチン)の書に載せて、微私東(ウイストン)が測定する所なりと云へり」(出典:遠西観象図説(1823)下)

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最新 心理学事典 「測定」の解説

そくてい
測定
measurement

測定とは,物やこと,および人を対象として,その属性を数値で表わすこと。心理学ではとくに知能や不安など構成概念としての属性を表わすものに数値を割り当てることであるが,ここで概念間の関係が数値間の関係と対応するように数値の割り当てが行なわれる(Krantz,D.H.et al.,1971)。たとえば,さんはさんよりある性格特性という属性を強くもつとき,さんおよびさんの特性の強さを表わす数値AおよびBABを満たすように割り当てる。一般的には,ある構成概念についてその強さの順序関係が与えられているとき,その概念の強さを表わす数値の大小関係が概念の強さの順序関係に対応するように数値が割り当てられる。

     AB

である。ここで,「」は概念においての方がより強いか同等であることを表わし,ABに割り当てられた数値であり,⇔は同値関係if and only ifを表わす。

 構成概念の強さの間に比の関係が成り立つとき,その比の関係が対応する数値の比の関係と一致するようにする。たとえば,明るさの測定においての明るさがの明るさの2倍であるとき,の数値Aの数値Bの2倍であるように数値を割り当てる。一般に,当該概念の間に比の関係が成り立つとき,

   の強さはの強さの倍 ⇔ AB

が成り立つように数値ABを割り当てる。

 公理論的測定理論axiomatic measurement theoryは,構成概念間の関係と数値間の関係の対応を公理論的に正当化する理論である。たとえば,拡張性extensiveとよばれる属性の性質では,測定対象()間に関係≿と結合演算∘が与えられ,以下の六つの公理が設定されている(Krantz,et al.,1971)。

 ⒜ ≿は弱順序である。

 ⒝ ()∘∘(

 ⒞ ならば

 ⒟ ならばとなるが存在する。

 ⒠

 ⒡ ii-1iであるとき,任意のjに対してjとなるが存在するならば,12,…は有限個の列である。

 ここで,「≻」は「≿であって≾でない」ことを表わす。また,上の公理においては記述を単純化しているので,厳密な記述はクランツKrantz,D.H.ら(1971)を参照されたい。

このとき,対象から正の実数への関数φが存在して

 (ⅰ)

 (ⅱ)

を満たすことが数学的に証明されている。この関数φが存在することを,表現定理representation theoremという。条件(ⅰ)は,の方がより強い性質をもつとき,それらに割り当てられた数値φ)とφ)の間に対応する大小関係が成り立つことをいうものである。条件(ⅱ)は,を結合したものに割り当てられる数値φ)が,に割り当てられた数値φ)とφ)の和であることをいうものである。すなわち関数φは,特性の間の強弱関係と結合結果を数値の大小関係と和の演算結果に対応づけるものである(準同型写像という)。前述の拡張性をもつ測定としては,たとえば物理的な長さが挙げられる。長さでは,長い方に大きい数値が割り付けられる。3mは2mよりも長い。また,二つの長さをつなぎ合わせたものの長さは,元の長さの数値の和になっている。3mのものに2mのものをつなぎ合わせたとき,その長さは5m(5=3+2)になる。

 強度性intensiveとよばれる属性の性質の場合は,拡張性の結合演算の性質が成り立たない。5mのものと5mのものをつなぎ合わせたものは5mより長いが,5℃のものと5℃のものを一緒にしても10℃にはならない。密度も同様に拡張性ではなく,強度性をもつ測定である。強度性の特徴は,自分自身との統合演算の結果の強度が自分自身の強度に等しい

     

というベキ等性idempotenceが成り立つことである(Krantz,et al.,1971)。ここで,「~」は「≿かつ≾である」こと,すなわち両辺の対象の強度が等しいことを表わす。

 上の拡張性測定の場合,条件(ⅰ)および(ⅱ)を満たす関数がφのほかにφ′が存在したとき,定数αが存在して

 (ⅲ) 

が成り立つ。たとえば上の長さの場合,mを単位とする数値の割り当てをφで,㎝を単位とする数値の割り当てをφ′で表わしたとき,φ′=100φが成り立つ。

 数値を割り当てる関数の間に条件(ⅲ)が成り立つとき,それらの割り当て方および数値,すなわち尺度は比尺度ratio scale(比率尺度ともいう)とよばれる。これは,数値の比が対象の強度の比に対応していて,数値の比が関数φに依存しないことを意味する。このことは,(ⅲ)式から



が成り立つことから,



と導かれる。尺度の種類は比尺度のほかに,その性質によって名義尺度nominal scale,順序尺度ordinal scale,間隔尺度interval scaleなどが区別される。

 温度と湿度の組み合わせに対する不快さの度合いのように,対象が二つの特性の組み合わせで構成されている場合の表現定理もある。対象aの二つの特性が12であり,対象bの特性が12であるとき,a=(12)およびb=(12)と表わされる。この二つの特性からなる対象を扱う公理系として,結合構造conjoint structureとよばれているものがある。ある条件(公理)を結合構造に設定すると,二つの特性に対する間隔尺度が存在して



が成り立つことが証明されている。

 心理学でもいろいろな測定が行なわれるが,スティーブンスStevens,S.S.は物理量ψの主観的感覚強度ψが直接報告可能であるとして,その主観的強度を報告させるマグニチュード推定法とよばれている直接法を用いて研究を行ない,ベキ法則ψ=aψbを見いだした。測定法としては,直接法のほかに,測定対象の構成概念についてのモデルを構成し,データから推定されるモデルのパラメータ値として構成概念の測定値を求める間接法がある。たとえばサーストンThurstone,L.L.(1927)の一対比較法では,二つの対象の強度の比較判断の確率の感覚の方がより強い)が,感覚の心理学的連続体を想定して,の心理学的連続体上の確率変数ABの関係によって表わされた。およびの心理学的値は,データとして得られた比較判断の確率から推定されるAB平均値として与えられる。

 構成概念についてのモデルに基づく間接法にはいろいろなものがあるが,項目反応理論ではテスト項目に対する正答率を能力θの関数として表わし,テスト項目に対する反応パターンからθの推定が行なわれる。また,多次元尺度法では,測定対象間の類似度あるいは非類似度の関係から各対象の心理学的多次元空間における値が推定される。

 スティーブンス(1951)は,科学の進歩の度合いは,その数学の利用の程度によって判断できると考え,そのためには対象(構成概念)の測定の基礎づけが重要であるとした。測定値に基づいて,それらの関係を数学的に表わしたとき,その有意味性meaningfulness(Luce,R.D.et al,2002)に注意する必要がある。たとえば,音の物理的強さの値ψとその心理的強さの値ψの間の関係が,ベキ法則ψ=aψbで表わされた場合について考える。ψの単位が強さ(エネルギーの流量)であるときの値をで,音圧であるときの値をで表わすとき,2の関係があるのでψ=aIbap2bとなる。ベキ指数は物理単位に依存して決まる値であり,のときであれば,のときは2になっている。すなわち,ベキ法則そのものは物理単位によらずに成り立ち,有意味であるが,ベキ指数の値は用いられている単位を示す必要がある。一般に法則は,それが成り立つ枠組みを明示する必要がある。たとえばニュートンNewton,I.による運動力学の法則は,慣性系という特別な座標系において成り立つ。

 物あるいは対象についての人による主観的判断に基づいて行なわれる検査・測定は,官能検査sensory test,sensory inspection,sensory evaluationとよばれている。官能検査では,心理学的測定を行なう精神物理学psychophysics的方法あるいは計量心理学psychometrics的方法が用いられる。測定対象の刺激と対応する感覚器官の組み合わせが,目と光,耳と音,舌と食品の味,鼻と香りあるいは臭い,皮膚と織物の風合いというように対応している場合のほか,商品に対する総合的評価のように複合的感覚による場合もある。また,強さの評定だけではなく,刺激の検出や差の弁別などの方法も用いられる。官能検査は心理学的測定法の一つの応用と考えられ,物理的測定量で直接表わすことのできない物,あるいは対象についての人による評価を測定する,あるいは人による判断を利用するために計量心理学的方法が活用されているといえる。 →尺度 →精神物理学的測定法
〔岡本 安晴〕

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改訂新版 世界大百科事典 「測定」の意味・わかりやすい解説

測定 (そくてい)
measurement

自然現象,社会現象,生理現象などを定量的に記述するためには,これらの現象に関連する量の大きさを数値,または符号を用いて表す必要がある。そのために行われる作業を測定という。量と数とは元来互いに関係のないものであるから,量の大きさを数値で表すためには両者の間に1対1の対応の規則を設けておく必要がある。これを測定の尺度という。例えば物理量の測定においてはすべての量について単位の大きさを定めてこれに1を割り当て,測定量が単位の何倍であるかを求めてその比の数値で測定量の大きさを表す。このような尺度を比例尺度という。このほかに間隔尺度,順位尺度,名義尺度があり,物理量以外の量の測定に用いられている。

 物理量は物理法則によって他の物理量と関係づけられているので,ある物理量を測定するのに,それと同種類の基準と比較するという直接測定の代わりに,それと関係のある他のいくつかの物理量を測定し,その結果を用いて測定値を求めるという方法が使える。これを間接測定という。例えば重力の加速度gを測定するのに,真空中での物体の落下距離と落下に要した時間を測定し,その結果を運動方程式の解に代入してg値を求めるのは間接測定である。このようにしてあらゆる物理量は測定可能であるが,とくに,ある物理量の測定を基本量だけの測定から導くような間接測定を絶対測定という。前に述べたgの測定は絶対測定である。また,長さや電流などの基本量の測定で,基本単位の定義によって決められた量を実現させ,それを用いて行う測定も絶対測定という。一方,圧力の測定に圧力計を,電圧の測定に電圧計を用いるのは比較測定である。これらの計器には目盛が備えられてあり,その目盛には基準と比較して数値が刻まれてある。したがって同じ種類の量と比較して測定が行われることになる。比較測定は簡便なので広く行われるが,基準となる目盛の正確さがつねに保たれるとは限らないので必要に応じて校正しなければならない。また,組立量の絶対測定は,その量を定義する物理法則によっているから,実際の測定においてその法則が正しく成り立っているかを吟味しなければならない。

 測定を実施するために装置系を構成するが,その構成法として偏位法,零位法,補償法,合致法などがある。偏位法はもっとも簡単で,測定量を原因としその直接の結果として生ずる指示から測定量を知る方法である。ガラス温度計,ブルドン管圧力計などがその例である。測定量と独立に,大きさを調整できる既知量を別に用意し,既知量が測定量と等しくなるように調整して(これを平衡させるという),そのときの既知量の大きさから測定量を知る方法を零位法という。既知量と測定量との大小を検知するための検知器を備え,また,その差を小さくするためのフィードバック操作が必要であり,そのため偏位法よりも複雑な構成となるが,精度のよい測定ができる。測定量からそれにほぼ等しい既知量を引き去り,その差を測って測定量を知る方法を補償法という。既知量が精度よく定められてあれば,測定量との差の測定精度があまりよくなくても精度のよい測定値が得られるのが補償法の利点である。周波数の精密測定に広く利用されている。目盛線などの合致を観測して,測定量と基準として用いる量との間に一定の関係が成り立ったことを知り測定値を求める方法を合致法という。カメラのレンジファインダーなどは合致法を使った例である。このほか,置換法,差動法などがある。

 測定は対象に関する知識が十分でないときに行われるが,測定の結果完全な知識が得られるという保証は何もない。測定のために援用した法則自身の,あるいはそれを測定系によって実現する際の不完全さや,測定時における環境変動など外部からのじょう乱などのために,信号の質が低下したりゆがめられたりして測定値として“真の値”と異なる値が得られることが多い。測定値から真の値を差し引いた値を誤差というが,これは概念規定である。真の値がわかっていれば測定の必要はなく,わからなければ誤差が求まらない。実際は,測定を反復して得られた複数個の測定値から誤差を推定する。

 誤差には二つの要因がある。一つは測定値にばらつきを生じさせるもので,これを偶然誤差という。偶然誤差は平均が0であると考えるので,偶然誤差を含む多数個の測定値の平均を計算すれば,それは測定値の母集団の母平均を与える。この母平均は必ずしも真の値と等しいとは限らない。この差を偏りといい,偏りを与える要因を系統誤差という。系統誤差があれば測定を何回反復しても真の値は求まらないから,系統誤差をなくしたり,また,その要素からの偏りへの寄与を推定して真の値により近い測定値を求めることが必要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「測定」の意味・わかりやすい解説

測定
そくてい

ある物や事象が、それと同じ種類の量の約束された一定量の何倍であるかを数量で表すこと。この約束された一定量を単位という。もっとも簡単な場合は、たとえば長さの単位で目盛られた物差しで物の長さを計ることで、このように計るべき対象の量と同種の量で直接計ることを直接測定という。しかし一般に直接測定が行える場合は少なく、理論を媒介にして間接的に測定することのほうが多い(間接測定という)。たとえば体積は各部の長さを計って計算によって求めるのが普通である。一般に各種の物理量は少数の、互いに独立した物理量を選んで単位を決めれば、他の量の単位は物理学の法則や定義を利用して組み立てることができる。この少数の量を基本量といい、単位を基本単位、組み立てられた単位を組立単位または誘導単位という。組み立てられた量の測定を基本量だけの測定から導くこと、および定義によって決められた量を実現させそれを用いて行う測定を絶対測定という。長さの単位「メートル」の定義は特定の光の波長を用いて実現されるが、この光の波長で直接ブロックゲージの長さを求めるのはこの例である。

 なお、最近では「測定(measurement)」は、ある量の値を実験的に得るプロセスと解されているのに対し、「計量計測(metrology)」は、測定の科学とその応用と理解され、より幅広い意味をもつとされている。

 測定の方法には比較測定、遠隔測定、零位法、偏位法、置換法、合致法、補償法、差動法などがある。比較測定は直接測定と同義で、遠隔測定は測定量の検出信号を、離れている受信器に伝えて行う測定。零位法は測定量とは独立に調整できる同種の既知量を用意し、測定量と一致させる測定。偏位法は測定量を原因とし、その直接の結果として生ずる指示による測定。置換法は測定量と既知量とを置き換えて2回の測定結果から求める測定。合致法は目盛り線などの合致を見て測定量と基準量の関係から測定する方法で、バーニヤ付きノギスによる方法はこの一つである。補償法は測定量からそれにほぼ等しい既知量を引き去り、その差を測って求める方法。差動法は同種類の2量の作用の差を利用する方法である。

[小泉袈裟勝・今井秀孝]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「測定」の意味・わかりやすい解説

測定
そくてい
measurement

対象を量的に知る操作。自然科学・技術・産業で一般に用いられる用語。測定値には,個数を数えるものと,ある基準量を単位としてその何倍であるかをはかるものとがある。前者は整数値でこれをデジタルな量といい,後者は連続量でこれをアナログな量という。デジタルな量の測定では,その1個が明確に定義可能でなければならない。アナログな量の測定には基準量を明確に定めなければならない。基準量を1組の実験ごとに任意に設定する測定を相対測定,基準量をたとえば国際単位系の基本単位または誘導単位にとる測定を絶対測定といい,後者の場合が一般により困難である。測定に用いる装置を測定器という。測定器の内部の機構およびその操作は測定のたびに完全には同一でないから,測定値には真の値との間に差があり,その差は同一対象を同一条件下で同一の測定器で測定しても毎回同一の値をとるとはかぎらない。この差を誤差という。誤差のうち原因が明確なものを系統的誤差といい,その原因の除去または生じるべき誤差を推定してこれを差引くことができる。それ以外の測定値をばらつかせる誤差を偶然誤差といい,反復測定して得られた測定値に統計操作を行い,最も確からしい値を定める。たとえば平均値や分散は統計操作によって得られる。測定器には多くの種類があるが,基本的には長さ・質量・時間・電流および温度を測定する。写真乾板などパターンを記録する装置も広義の測定器に含まれる。測定器で得られる測定量の有効数字が多いほど,測定の精度が高い。精密な測定や複雑な測定では,測定量を電流・電圧に変換して行うことが多い。測定手段にもよるが,長さは 10-10m 程度まで,質量は 10-15g 程度まで,時間は 10-12 秒程度まで技術的に測定可能である。

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百科事典マイペディア 「測定」の意味・わかりやすい解説

測定【そくてい】

ある物理量を数値と単位で表示するための操作。長さ,質量,時間,電圧など,通常の物理量では量と数とを対応させる測定の尺度として単位を定め,これを基準として測定量が単位量の何倍かを示す比の数を測定値とする。測定には,長さをものさしと比較して測るような直接測定と,速度を測るのに移動距離と時間から算定するような間接測定がある。測定に用いる器具,機械などを測定器,計測機械といい,このうち量の大きさを指示,記録するものを計器という。

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普及版 字通 「測定」の読み・字形・画数・意味

【測定】そくてい

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