放射性物質が放出する放射線の強さが、半分に減少するのに要する時間。放射性物質の放射線の強さは時間とともにしだいに減少していく。これは、放射線を出す原子核の数が時間とともに減少し、また放射線の強さが単位時間当りの崩壊原子核数に比例するためである。放射性物質の原子核の崩壊は、個々の原子核については偶然に支配される確率現象である。しかし非常に多数の崩壊しうる原子核の集まりについては、単位時間に崩壊する割合λ(ラムダ)は一定の値となる。崩壊しうる原子核の数をNとし、そのうち単位時間内に崩壊する原子核の数をnとすると、λ=n/Nで与えられる(λを崩壊定数という)。この値は、1個の崩壊可能な原子核が単位時間に崩壊をおこす確率と考えてよく、その逆数は崩壊の平均寿命τ(タウ)=1/λを与える。通常、崩壊の寿命は平均寿命に比例した半減期T1/2=(ln2)×τで表される(lnは自然対数)。T1/2は放射性元素の量が初めの量の半分になる時間として定義される。すなわち、ある時刻にN0であった崩壊可能な原子核の量が、T1/2時間たつとN0/2となる。半減期は崩壊する原子核の種類で異なり、長いものから短いものまでさまざまである。
[池田清美]
放射性同位体が放射性崩壊するとき,崩壊していく親の核の数は指数関数的に減少していくが,統計的にこれが1/2となるのに要する時間T1/2を半減期と呼び,寿命の目安とする。崩壊に伴って,α線,β線,γ線などの放射線が放出されるが,その強度も半減期ごとに,1/2,1/4,1/8,……と1/2ずつ減少していく。崩壊定数λとは,T1/2(loge2)/λ=0.693/λの関係にある。核分裂や核融合で多種の放射性同位体が同時に生成される場合,半減期の短いものは早くなくなり,長い半減期のものは後まで残ることになる。生体中に放射性物質が取り込まれたときには,新陳代謝を考慮した生物学的半減期が用いられることがある。
執筆者:山崎 敏光
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安定状態にない粒子の寿命を示すのに用いられ,ある状態の粒子数(存在確率)が1/2に減少するまでの時間をいう.放射性原子核または素粒子の場合は,現象が時間の指数関数で表される.半減期Tは,崩壊定数λおよび不安定状態の平均寿命(崩壊定数の逆数)τとの間に,
の関係がある.化学反応が一次反応のときは反応物質の半減期は放射性崩壊と同様に,反応物質の濃度に無関係であるが,二次反応では半減期は反応物質の濃度に逆比例する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…いまN個の放射性同位体が存在するとき,単位時間当りの崩壊の数(例えばdps(disintegration per second))はNに比例し,その比例定数が崩壊定数に等しい。N個の核が崩壊によって1/2Nに減少するまでに要する時間を半減期と呼び,放射性同位体固有の定数である。放射能の強さによって放射性物質の量を表す単位にキュリーCiがある。…
※「半減期」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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