労働司祭(読み)ろうどうしさい(その他表記)Prêtres ouvriers; Arbeiterpriester

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「労働司祭」の意味・わかりやすい解説

労働司祭
ろうどうしさい
Prêtres ouvriers; Arbeiterpriester

労働者の世界にキリスト福音を伝えることを目的とし,みずから労働者となって生活をともにしているカトリック教会の司祭たちをいう。この運動は,現代社会における労働者階級の教会からの離反が,教会のブルジョア性と怠慢にあるとする深刻な反省をもとに,第2次世界大戦後のフランスにおいて,ドミニコ会士ジャック・レーブらによって始められた。またパリ大司教スハール枢機卿は「ミッション・ド・フランス (フランス宣教会) 」を創設,労働者のなかでの宣教をはかったが,保守的カトリック反発を招き,1954年,教皇庁は「労働司祭の実験停止」命令を発した。しかしその後もこの運動は発展を続け,65年にはレーブの「使徒的協会」が正式に認可された。一方,54年に結成された「労働宣教会」も発展し,約 1000人の労働司祭が,工場労働者,給仕,塗装工,掃除人などとして奉仕している。この運動は,ブラジル,カナダ,日本でも展開されている。プロテスタントでこれに相当するのは,ドイツの社会牧師,労働牧師,工業牧師などで,労働司祭と同様の奉仕をしている。ちなみにアメリカのボストン神学校には労働牧師の養成センター Training Center of Industrial Chaplainが設けられている。

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