六訂版 家庭医学大全科 「単純疱疹」の解説
単純疱疹(ヘルペス)
たんじゅんほうしん(ヘルペス)
Herpes simplex
(感染症)
どんな感染症か
単純ヘルペスウイルスによる感染症で、ヘルペスとも呼ばれています。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型があります。初感染では型に関係なく、体のどこにでも感染して発症します。このウイルスも、前述の
そして、発熱、過労、胃腸傷害、精神的ストレス、日光照射、寒冷、性交渉、時差などの誘因によって、潜んでいたウイルスが再び活性化し、神経を伝わって皮膚にさまざまな炎症を起こします。
1型は主に上半身、2型は下半身に再発を繰り返します。2型は1型と比べて再発頻度が高く、月に1~2回再発する人もいます。
症状の現れ方
初感染の場合は、感染後4~7日で感染部位が赤くなり、のちに水ぶくれがたくさん現れます。その近くのリンパ節がはれて痛みを伴い、発熱、
再発の場合は、感染部位が初めは痛がゆくなり、数時間後に赤いぶつぶつや小さな水ぶくれが数個現れます。やがて破れて、じくじくしますが、かさぶたとなり、1~2週間で治ります。
アトピー性皮膚炎の患者さんの場合は、皮膚のバリア機能が低下しているため、単純ヘルペスウイルスが皮膚に付着すると容易に感染し、顔や体の広範囲に水ぶくれが現れます。
これをカポジ水痘様発疹症(すいとうようほっしんしょう)といい、初感染、再発のいずれでも生じますが、とくに初感染の場合はウイルスに対する免疫がないために重症化し、死亡することもあります。
検査と診断
症状から診断がつきますが、おでき(
治療の方法
放置しても自然に治りますが、ひどい場合は抗ウイルス薬(ゾビラックス、バルトレックス)を内服します。性器の場合は、ほかの人にうつさないようにするために、抗ウイルス薬の内服が基本です。これは再発時に、ウイルスが精液や
免疫不全者や初感染で重症の場合は、抗ウイルス薬の点滴静注を行います。
病気に気づいたらどうする
できるだけ早期に皮膚科を受診することをすすめます。とくにアトピー性皮膚炎の患者さんは、ひどくならない前に抗ウイルス薬の内服が必要です。
本田 まりこ
単純疱疹(ヘルペス)
たんじゅんほうしん(ヘルペス)
Herpes simplex
(皮膚の病気)
どんな病気か
口唇あるいは陰部などに、限局性に多発する
原因は何か
単純ヘルペスウイルス(HSV)の皮膚粘膜への感染によって発症します。単純ヘルペスウイルスには1型(HSV1)と2型(HSV2)の2種があり、HSV1は主に上半身の、HSV2は主に下半身の病変の原因になります。接触感染により伝搬します。
症状の現れ方
単純疱疹(ヘルペス)では、初感染(免疫のない人に初めて感染した場合)と再発(潜伏感染していたウイルスが再び増殖して病気を起こす場合)とにより症状が異なり、また、1型と2型によっても違いがあるため、非常に多様な症状を示します。
HSV1では、幼小児期の初感染の約9割は無症状で、一部に発熱と口腔内の小さなびらん、潰瘍が多発する
HSV2では、その初感染のほとんどが性行為感染症として陰部に小水疱、びらん、潰瘍を比較的広範囲に起こす性器ヘルペス(陰部ヘルペス)として発症します。HSV2による性器ヘルペスは初感染ののち、限られた範囲の陰部に繰り返し小水疱をつくる再発病変がしばしばみられます。
そのほか、顔面、手指など全身どこにでも単純疱疹(ヘルペス)の病変がみられることがあります。
検査と診断
熱感を伴って口唇あるいは陰部などに小水疱がみられたら、本症を疑います。臨床的に診断できる場合が多いのですが、水疱の底にある細胞を採取して、ギムザ染色でウイルス感染によって起こる細胞の変化を検出するツァンク法や
検査と診断
抗ウイルス薬のアシクロビル(ゾビラックス)またはバラサイクロビル(バルトレックス)の内服治療が中心です。再発病変では、症状はごく軽い場合もありますが、早期に治す意味からも抗ウイルス薬の外用などが行われます。
病気に気づいたらどうする
症状のある初感染では、発熱などの全身症状も顕著であることが多いので、ただちに医療機関を受診してください。
関連項目
安元 慎一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報