化学辞典 第2版 「反成長反応」の解説
反成長反応
ハンセイチョウハンノウ
depropagation reaction
重合反応における成長反応の逆反応をいう.付加重合反応において,一般に開始反応,成長反応および停止反応などの素反応が考えられているが,たとえばビニルポリマーの熱分解でもとの単量体が生成するような解重合反応では,この反成長反応が素反応の一つに含まれる.
成長反応と同様に,高分子末端の活性は,フリーラジカル(遊離基)である場合もイオンである場合もある.重合反応においても成長反応は可逆的であると考えてよい.平衡状態にあるとすると,
となり,正逆両反応の速度は等しいから,
kp[Mn*][M] = kdp[Mn+1*]
であり,nが大きいと,
kp[M] = kdp
と書ける.また熱力学的には,
Δ Gp = Δ Hp - TcΔ Sp = 0
である(Δ Gp:ギブズエネルギー変化,Δ Hp:エンタルピー変化,Δ Sp:エントロピー変化)ので,このときの重合温度を Tc,単量体濃度を [M]e とすると,次式が導かれる.
Δ Sp°は標準状態におけるエントロピー変化で
[M]e = 1 mol L-1
のときの値をとる.Tc を重合における天井温度,[M]e を平衡単量体濃度という.ビニル化合物では,Δ Hp,Δ Spともに負であるので,重合温度が Tc 以上ではΔGが正になり重合が起こらず,解重合することになる.また,硫黄 S8 の線状重合体への重合反応では,ΔHもΔSも,ともに正であるので,重合温度が Tc 以上にならないと重合体が生成しない.後者の場合,Tc を床温度ということがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報