叙事詩圏(読み)じょじしけん(その他表記)Epikos Kyklos

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「叙事詩圏」の意味・わかりやすい解説

叙事詩圏
じょじしけん
Epikos Kyklos

ギリシアホメロスの二大叙事詩イリアス』と『オデュッセイア』を中心にして,天地の初めから英雄時代の終りまでの叙事詩を集めて,物語の順序に並べたもの。『神統紀』 (ヘシオドスの作とは別) ,『巨人の戦』『キュプリア』『イリアス』『アイティオピス』『小イリアス』『イリオス陥落』『帰国物語』『オデュッセイア』『テレゴネイア』の順。『キュプリア』以後トロイ戦争とその後日談。このほかにテーベ伝説を歌った『オイディプス物語』『テーベ物語』『後裔』があり,これらが別の「テーベ圏」をなしていたのか,それとも「トロイ圏」の一部として『キュプリア』の前に入っていたのかは明らかでない。ホメロスの2編を除いて,すべて失われた。

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世界大百科事典(旧版)内の叙事詩圏の言及

【ホメロス】より

…なお,ホメロスを盲目の詩人とする巷説は,《ホメロス風賛歌》中の〈アポロン賛歌〉にある〈峨々たるキオスに住む盲(めしい)の人〉という作者自身への言及に由来するもので,ヘレニズム時代以降のホメロスの胸像等はつねに彼を盲目の老人で表現している。 最後に作品については,古くは二大叙事詩のほかにも,〈叙事詩圏〉中の《テーバイス》《エピゴノイ》《キュプリア》や,滑稽詩《マルギテス》(これらはいずれも断片しか伝わらない),約300行の《蛙鼠(あそ)合戦》,長短30数編の《ホメロス風賛歌》などが彼に帰されていたが,今日では,《イーリアス》《オデュッセイア》以外はいずれもホメロスの作にあらずと判断されている。
[ホメロス問題]
 このようにホメロスに関する伝承があいまいであるにもかかわらず,少なくとも《イーリアス》と《オデュッセイア》に関するかぎり,古代人はそれがホメロスの作たることを信じて疑わず,《オデュッセイア》はホメロスとは別人の作と唱えて〈分離派〉と呼ばれたアレクサンドリアの一部の学者の声などは,まったくの例外にすぎなかった。…

※「叙事詩圏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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